2 その意味

それから数日が経ち、僕は学校にも少しずつ慣れはじめてきていた。しかし、僕には一つ、どうしても気になっていたことがあった。それは、この学校に来た初日、クラスメートの女子に言われた事だった。僕はどうしてもその意味を知りたくて、彼女に聞くことにした。昼休み僕は、彼女を探しに教室を出た。どうやら彼女は、いつも弁当を持って、屋上で食べているらしい。僕は、三年生の階の上にある屋上へと向かった。
屋上は思っていたよりも広かった。他にも何組か昼食を食べてる人達は居たが、彼女はすぐに見つかった。
「…あの、ちょっといいかな?」
僕は、屋上から遠くを見つめてる彼女に話しかけた。
「あの…、その何ていうか…。」
意味を知りたくてこの屋上まで上がって来た僕だったのだが、基本的に女子と話すのが得意な方ではなかったため、上手く言葉が出てこずにいた。僕が言葉に詰まっていると、彼女が遠くを見たまま、口を開いた。
「いとう きょうこ。」
「…えっ?」
「ワタシの名前。」
僕は、そこで初めて彼女の名前を知った。
「で、何か用?」
「あっ…この前の事なんだけど…。」
僕も、彼女と同じ方向を見ながら話した。
「この前、僕が猫っぽいて言ってたよね?あの意味をどうしても教えてほしくて。」
「ああ、そのことね。」 彼女は思い出したかのように話しを続けた。
「そのままの意味よ。あなたって、たぶん猫みたいに気分屋なんだろうなって思って。北島君に皮肉っぽい事言ったのに、それをスルーされたものだから、ムッときてたでしょ?」
正直、僕は驚いた。あの時初めて会った彼女に、僕の内面がバレていたのだ。そんな風にあっさりと見抜かれた僕だったが、一応の抵抗はしてみた。
「そんなことないよ。僕は皮肉なんて言ったつもりはない。」
その時、僕は彼女と目を合わせた。
「だいたい、失礼だろ?。会っていきなりそんな風に言うなんて。」
そう言うと、意外にも彼女は言った。
「そうね…ごめんなさい。」
そして、彼女はさっさと教室へと戻っていった。さっきまでズバズバ言ってきたのに、突然謝られた事が、少し腑に落ちずにいた。
「…どっちが猫っぽいんだよ。」
誰も居なくなった屋上で僕はつぶやいた。

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