冬の妖精
□破片に触れる
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ユキが倒れた。
いつもは冷たいユキの手が、少し熱を持っていた。
「先生、俺が保健室に運んでいきます」
「宇佐美、頼んだ。おーいお前らは試合続けるぞー」
初めて感じたユキの体重は、とても軽かった。
保健室に来る前に、ハルから氷を体中にあててくれと言われた。
言われた通りに保健室にある保冷剤を全て取り出し、ユキの身体を冷やした。
そうしたら顔色もよくなっていき、瞬く目を覚ました。
「大丈夫か、ユキ」
「うん。心配かけたね、ごめん」
沈黙が流れる。
俺が聞きたいのは「ごめん」じゃなくて、
ユキがあの時の少年だと思い出したその時から
「ユキ、俺はお前が好きだ」
「俺も夏樹が好きだよ」
「じゃあ・・・」
「でも、俺は夏樹を愛してしまったら、未練が残る」
「どういう事だよ」
聞きたくないけど聞きたい。
「もう、隠せないだろうから、言うね」
そう言って、ユキは弱々しく微笑んだ。