冬の妖精

□もうすぐで
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夏樹が俺の事を思い出してくれて、
それからはよく話すようになったし、遊ぶようになった。
ずっとずっと、独りだったあの頃が懐かしく思える。
でも、夏が来てしまう。もうすぐで夏休み。



「暑くなってきたね、ユキ」
「うん」
「体育、出る?」
「うん、がんばる」

今日の体育は雨により水泳が中止になって、バスケになった。

「無理そうだったら言ってね!僕がユキを助けてあげる!」
「ありがとう、ハル」

正直、体育館に向かうこの道のりだけでも辛い。
そんな事をハルに言ったら絶対騒ぎはじめるから言わないけど。

「いーち、にー、さーん、し」

授業が始まった。
体操をして、2人組で柔軟。
そしてボールを使ったウォーミングアップ。
4つのチームに別れて総当たり戦。

夏樹、バスケやっててもかっこいいなぁ
とぼんやり眺めているうちに、自分のチームの番になる。
試合を眺めていただけなのに息が荒い。汗の量が異常。
やっぱり、授業休めばよかったな・・・

「真田!こっち!」

俺がパスしたボールを同級生がゴールに入れる。
暑い、くるしい、目がまわる、水を飲みたい。
ゴールに入れた人が俺の方にハイタッチしに来る。
頭が回らない、酸素が欲しい。誰か、助けて・・・
夏樹、なつき、たすけて

「・・・ユキ?ユキっ!!」

俺は遠くなっていく意識の中で、夏樹の声だけはしっかり耳に届いた。

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