おめでとうを君に

□おめでとうと大好き
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俺が貰ってうれしいもの

してもらってうれしいこと

それが阿部君と一緒っていうことが

すごくうれしくて。



阿部君がそうやって幸せそうに笑うなら来年も再来年も一緒にいたいな。

















「阿部の誕生日?」

お昼休みに泉君に「阿部君の誕生日に何をあげたらいいかな」って聞いたら泉君もうーんって考え込んでしまった。

1週間前からどうしようか考えてるんだけど、阿部君が何を欲しがってるのか、どうしてほしいのか分からないまま、誕生日の前日になってしまった。
初めての大好きな人お祝いしてあげられる誕生日だからやっぱり喜んでもらいたい な。


「なぁ! 阿部の好きな事、知らねぇの?」

一緒にお昼ご飯を食べていた田島君が俯いたままの俺の顔を覗き込んでそう聞いてきた。

「阿部君の好きな事…」
「そうそう。好きな事が何か考えてから何をあげたらいいか考えればいいじゃん」

「なっ!」って笑う田島君に頷いて、阿部君の好きな事が何かを考える。
いつも阿部君と帰る時にしている話。
電話とかメールでしている話。
阿部君がよく読んでる本や、よく見ているテレビ。

「分かった?」
「…野球!」

泉君の言葉に力強くそう答えると、泉君も田島君も何だかびっくりしたような顔をした。
あれ? 俺、間違った かな?

「あ、あの ね! 阿部君と話 する時も いつも野球で…。俺、それ 以外思いつかなくて…」

一生懸命に説明をするとさっきまで目をぽかんとしていた泉君と田島君が突然笑い出した。

「そーだよな! 阿部と言ったら野球と三橋だよな!」
「俺もそれ以外思いつかねぇ」

「う、え?俺?」って首を傾げると浜ちゃんまでもうんうんって頷く。


「じゃあさ、野球に関することで探してみたら?」
「グローブとかバットとか」
「で、でも、阿部君 新しいのもう持ってる よ?」

やっぱり何も思いつかない の かな。
阿部君の誕生日は明日なのに。
どうしよう。
じわりと涙が滲んで視界が霞む。


「じゃあ、三橋のしてほしい事とか欲しい物は?」
「俺 の…?」

突然浜ちゃんがそんなことを言うから真意がつかめずに目をパチパチとさせる。
それとは逆に浜ちゃんはにこにこしながら俺の答えを待っている。
俺がしてほしい 事? 欲しい物?

「三橋の好きな事も阿部と同じだろ?」

俺が考えていると浜ちゃんが聞いてきた。

「うん。 俺 ね、阿部君とキャッチボールしたりしたい な!」

俺は何かを貰うより、何より阿部君とキャッチボールをすることが大好きなんだ。
そういえば、俺の誕生日に阿部君とキャッチボールしたっけ。
すごく楽しかったし、うれしかったんだ。

「じゃあ、それでいいんじゃねぇの?」

泉君の言葉に田島君も浜ちゃんも笑って頷いた。

「でも、それ 俺がして ほしいこと だよ?」
「大丈夫だと思うよ。大事なのは気持ちだから。好きな人と過ごせたらそれだけでもうれしいとおもうよ」

そう言って浜ちゃんが「ね?」って泉君に笑うと泉君はぷいって横を向いてしまった。
でも、その顔はちょっと赤くてすごく幸せそうだ。
田島君も「俺の誕生日に花井がいっぱい笑ってくれたらすっげぇうれしいもん!」って言うから、俺も阿部君におめでとうを言ってキャッチボールをすることに決めた。


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