短編小説
□三味線
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「………………。」
半蔵は目の前にある青色の三味線をじっと見つめていた。
ちなみにここは大阪城である。
秀吉が武将達の親睦を深めるためにと計画した大規模な酒宴に、徳川軍も招待されていた。
会場では半蔵の主である家康や徳川家家臣達が秀吉を始めとする豊臣軍などの武将達と共に酒を酌み交わしている。
本来ならば半蔵も出席すべきなのだが………
如何せん半蔵はこのような賑やかな場はひどく苦手としていた。
人と接したりすることを苦手とする半蔵にとってはこのような場所は居心地が非常に悪いものだった。
何せ会話に入ることができない。人と話すこともあまり好まない半蔵はとにかくこんな場所が嫌いで仕方なかった。
他人と話すようなこともない。それ依然に話題が見つからないのだ。何を話したらいいのかがさっぱりわからない。
そのためか徳川軍で行なわれる酒宴にも参加することがなかった。
家康もそんな半蔵を無理に宴に出席させず、こういう時はそっとしておいてくれていた。
今宵は一応護衛として連れてこられていたのだが。
何もすることがなく暫く大阪城の屋根の上で夜風に当たっていたが、
半蔵は今後のためにも大阪城の造りを知っておこうと城内をすこし見て回ることにした。
そこで偶々入った部屋に三味線が立て掛けてあったということである。
色や従来の三味線の形状と少し異なることからおそらく元親のものだろう。
ということはこの部屋は宿泊のため元親に用意された部屋なのか。
(…宴の席には持っていかなかったのか…)
半蔵は三味線を弾いた事がない。触ったことすらなかった。
(…………触ってみたい)
何となく、気になった。
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