短編小説

□悔恨
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――――――頭の中が真っ白になった




血の滴る十文字槍

地に崩れ落ちた漆黒の影




―――――――カシャン




思わず朱塗りの槍から手を放した


目の前に倒れた忍を抱き上げる


顔を隠す覆面を取ると整った美しい顔が見えた


「…半………蔵…………」


憎んでいた

お館様を殺したこと

憎んで

憎んで

いつか仇を討つと

そう心に決めて

ずっと追い続けた


そして


たった今



仇を討った





それなのに





この胸の痛みは何だ?




降り止まぬ雨に混じり、頬に一筋の涙が零れた


――――――――あの時


槍を突き刺した時


ほんの一瞬見せたあの寂しげな


でも、嬉しそうな瞳が


忘れられなかった



「……半…蔵…………」



名を呼んでも当然返事などなく


段々冷たくなっていく身体が怖くて


力の限り抱き締めた




―――――――あぁ




今まで




これほど







人を殺めたことを後悔したことがあっただろうか?




















END




話分かりづらい。

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