59

□初恋の味
2ページ/6ページ


 
「…じま!田島!!」

誰かが自分を呼んでいる。
うっすら目をあけるとそこには。
メガネを怪しく光らせた数学教師。

「うわッ、あッ、はい!!!」

あわてて立ち上がっても遅かった。

朝練と朝飯後の数学の授業。
寝てはいけないと何度も自分に言い聞かせたが無駄だったようだ。

廊下に立ってぼんやりと考えた。

「あの女の子の名前なんだったっけ」

田島の初恋の相手。

顔は今でもはっきり覚えている。

色素の薄い髪色に、大きな目。
困ったように垂れた眉毛に。
大きな笑顔。

それだけで恋に落ちるのは十分だった。

あれきり一度も会えていないけど。

「もっかい、あってみてーよなー」

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ