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□初恋の味
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「…じま!田島!!」
誰かが自分を呼んでいる。
うっすら目をあけるとそこには。
メガネを怪しく光らせた数学教師。
「うわッ、あッ、はい!!!」
あわてて立ち上がっても遅かった。
朝練と朝飯後の数学の授業。
寝てはいけないと何度も自分に言い聞かせたが無駄だったようだ。
廊下に立ってぼんやりと考えた。
「あの女の子の名前なんだったっけ」
田島の初恋の相手。
顔は今でもはっきり覚えている。
色素の薄い髪色に、大きな目。
困ったように垂れた眉毛に。
大きな笑顔。
それだけで恋に落ちるのは十分だった。
あれきり一度も会えていないけど。
「もっかい、あってみてーよなー」