59

□あい あむ あ ぼーい
4ページ/5ページ

「もし、かして…栄口い」

顔を真っ赤にしてどもりながら、田島がつぶやく。

「俺以外は知らないと思うよ?」
「へ?そーなの?」

てっきりわかりやすいといわれて、周知の事実になっているのかと思ったら。

「俺は、敏感だからね」

自慢なのか、そうじゃないのか、栄口はしれっと言った。

「俺は、いーと思うよ。誰が好きとかかんけーないじゃん?」

珍しく饒舌な栄口は続けた。

「俺達は、子孫を残すためだけに恋するんじゃないんだから」

何かにむっとしてるのか、一瞬栄口の目が何かをにらんだような気がした。

「だから、俺はいいと思うよ、田島」

いつもの栄口に戻って、田島に笑いかけた。

「あ、ありがとな」

突然気付かされた自分の気持ちと。
栄口のあの強さと。
自分の気持ちへの動揺と。
でも、どこかでわかってたような気もしたのだ。
好きだということが。
認めたくなかったのかもしれない。
誰かに背中を押してもらいたかったのかもしれない。

「なんか、すっきりした」
「それは、よかった」

顔を見合せてへへへと一緒に笑った。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ