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□あい あむ あ ぼーい
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「好きなんだろ?そいつのこと」
「…は?」

予想外の言葉に絶句する。

スキって、好きって、すきって…
あの好き?

「そう、その好き」

心の声がもれてたみたいだ。

「俺が、そいつんこと好きなわけ?」

男で
胸もなくて
ぼーずで
主将で
俺より背高くて。
そんなあいつを?すき?

「だから、好きなんでしょ。それが、恋だよ」

栄口が言い切る。
栄口が言うなら、そうかもしれないけど。
うーん、と釈然としない感情をうめきごえに洩らす。
それを見た栄口がまた少し溜息をついて言った。

「田島、言っちゃうけど、いい?」
「へ?何が?」
「だから、俺、ちょっと今から言うけどいい?」

じっと眼を見られる。
その眼は真剣そのもの。
思わず、こくんとうなづいた。

「男とか、かんけーないと思うよ、俺は」

続いた言葉にまたびっくりする。
さっきの心の声また漏れてた?

「お前の言ってんの花井のことでしょ?」

栄口がド直球で聞いてくる。
びっくりしすぎて口からあぐあぐと声にならない声が漏れる。
顔もかぁっと赤くなる。

「そんな、びっくりしなくても」
みてたらわかるよ、と栄口は笑う。

「そ、そう?」
「うん、お前、わかりやすいから」

にっこりと栄口は笑った。
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