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□あい あむ あ ぼーい
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「もし、かして…栄口い」
顔を真っ赤にしてどもりながら、田島がつぶやく。
「俺以外は知らないと思うよ?」
「へ?そーなの?」
てっきりわかりやすいといわれて、周知の事実になっているのかと思ったら。
「俺は、敏感だからね」
自慢なのか、そうじゃないのか、栄口はしれっと言った。
「俺は、いーと思うよ。誰が好きとかかんけーないじゃん?」
珍しく饒舌な栄口は続けた。
「俺達は、子孫を残すためだけに恋するんじゃないんだから」
何かにむっとしてるのか、一瞬栄口の目が何かをにらんだような気がした。
「だから、俺はいいと思うよ、田島」
いつもの栄口に戻って、田島に笑いかけた。
「あ、ありがとな」
突然気付かされた自分の気持ちと。
栄口のあの強さと。
自分の気持ちへの動揺と。
でも、どこかでわかってたような気もしたのだ。
好きだということが。
認めたくなかったのかもしれない。
誰かに背中を押してもらいたかったのかもしれない。
「なんか、すっきりした」
「それは、よかった」
顔を見合せてへへへと一緒に笑った。