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□あんはっぴー?ばれんたいん
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「じゃーなぁー」
部室の戸締りを終え、花井と校門に向かった。
空気が重い。
なんか、喋んないとなぁ…
でも、花井にもしも彼女ができてたら…
オレが話したと同時に振られるのだろうか?
そう田島がおもっていると、
「あのさ、た…」
花井が口を開いた。
が、すぐに閉じる。
どうしたのだろう、と思って花井を見ると何かを凝視していた。
目線の先をたどってみると、
「あー!田島!!」
「え?り、利央…?」
その人は夏の大会で自分とアドレスを交換した、桐青のキャッチャー、利央だった。
「そー。田島、ひさしぶり。元気だった?
はい、バレンタインのチョコ。どうしても今日渡したくて。待ってたんだ」
はい、と両手で差し出す。
高級な銘柄のチョコレート。
受け取るか?
いっそ花井の前で。
ちらとそんな考えが頭をよぎる。
「わりぃ、俺、チョコはちょっと…体重が」
だけど、できなかった。
花井のこと、こんなにも好きなんだよ。
たとえ、花井がオレから離れて行ったとしても。
「あぁ、そ、っか。そうだよな。
オレもそうだし。こっちこそごめん。またスポドリでも持ってくるわぁ」
じゃあな、と手を振って利央が去っていく。
隣でほっと息をつく花井に少し腹が立つ。
何でそんなにあからさまにほっとするんだよ…
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