59

□はっぴー、ばれんたいん
5ページ/9ページ

利央の出現でさらにタイミングを失ってしまった。
どうしよう…
渡さずに帰る?
でも、昨日練習後に皆が寝静まった後に作ったんだし…
せっかくだし…
ぐるぐる花井の頭の中を考えが巡る。
意を決して
「あのさッ」
出した声は自分でも驚くほど掠れていた。
こっちを見て田島が不機嫌そうに言う。
「何?」
「あの…チョコ、ダメだって言ってたけど…
捨ててくれてもいいから…
これ…」
鞄の中から生チョコを取り出す。
田島の目の前に差し出した。
いらない、って言われたらどうしよう。
そう思ったら田島の顔が見れなかった。
しばらくすると、手からチョコの重みがなくなった。
ほっとする。
田島を見ると、さっきよりも不機嫌な顔をしていた。
その顔のまま、田島が口を開いた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ