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□はっぴー、ばれんたいん
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「じゃーなぁー」
部室の戸締りを終え、二人で校門に向かった。
沈黙の中、二人で歩く。
意を決して花井が口を開いた。
「あのさ、た…」
そのとき校門に人気が見えた。
背の高い、顔のちいさい、あれは…
「あー!田島!!」
「え?り、利央…?」
その人は夏の大会で田島とアドレスを交換したという、桐青のキャッチャー、利央だった。
「そー。田島、ひさしぶり。元気だった?
はい、バレンタインのチョコ。どうしても今日渡したくて。待ってたんだ」
はい、と両手で差し出す。
高級な銘柄のチョコレート。
自分の鞄には手作りのチョコ。
ま、負けた…
田島、うけとんのかな。
とんないのかな。
「わりぃ、俺、チョコはちょっと…体重が」
「あぁ、そ、っか。そうだよな。
オレもそうだし。こっちこそごめん。またスポドリでも持ってくるわぁ」
じゃあな、と手を振って利央が去っていく。
本当にそのためだけに来たんだな。
あいつも田島のこと、好きなんだよな…たぶん。
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