59
□春よコイ
1ページ/6ページ
あっ、花井だ!
部活帰りに花井と本屋に寄る約束をしていた。
待ち合わせの場所に花井を見つけると。
なにやら悲しそうな顔でこっちをみている。
おーい、花井!!
待たせてわりかった!!
必死に大声を出す。
花井は聞こえないかのようにうつむいた。
すると。
ものすごい勢いで花井の後ろから車が迫っていた。
花井!!
危ない!!
後ろ!!
叫んだ。
それでも花井は動かない。
こっちをみて悲しそうにほほ笑む。
助けに行こうと走ろうとしても。
足が動かない。
なんだ、これ…
動け!おれの脚!!なんで…
ぱっと顔をあげると花井の口がかすかに動く。
聞こえねぇよ!花井ぃ!あぶねぇ!!
花井の姿も田島の声も、車のヘッドライトにかき消された。