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□はっぴー、ばれんたいん
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「なぁなぁ、今日バレンタインデーだっただろ?!お前らチョコ何個もらった?」
部活が終わったと同時に水谷が話し出す。
冬は日が短くて、それでももう今は夜の8時をとうに回っていた。
部室で皆で着替えるのは毎度のことで、花井は小さくため息をつく。
ここじゃ、渡せない。
「俺は一個」
さらりと阿部が言った。
「アーレー?お前、たくさん呼び出しとかあったじゃんよ。
下駄箱にだってたくさん詰め込まれてただろ?」
水谷が茶々を入れる。
そんなの、分かり切ってるだろ?
そう言うように阿部が三橋の頭をポンポンと叩いた。
この二人が付き合い始めたのは、今年の夏ごろ。
詳しい話は知らないが、初めての夏のトーナメントが始まるころには付き合っていた、という話だ。
三橋の顔がどんどん赤くなっていく。
皆の視線が耐えられなくなったのか、
「…あ、あのッ…た、じまくん、は?」
と兄貴分である田島に話を振る。
ドキッとして、思わず顔をあげそうになった。
だけど、ここにいる皆だれも、俺たちが付き合ってることを知らない。
悟られるわけには、いかない。
平然を装って黙々を着替えを続ける。
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