銀色の世界
□S2〜出会い編〜
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雲ひとつない青空。
爽やかな風が吹く初夏。
カップルはあちこちでいちゃつき、浮かれている。
そんな光景を見て、銀時はため息をついた。
「ったく、公園はバカップルのモンじゃねぇつうの。イチャイチャしてぇならラブホにでも行きやがれ」
こっちはパチンコで大負けして苛々してるつうのによー!と喚いてみるが、カップルは自分達の世界に入っているのか、銀時の事を気にした様子もなく、相変わらずベタベタしている。
しかも、公園の甘ったるい雰囲気につられてか、カップルは増えていた。
(こんなんじゃ、俺が場違いだな…)
連れでもいれば良いのだが生憎、可愛い銀時の恋人は万事屋で留守番中だ。
多分、掃除でもしているのだろう。
しょうがない、と銀時は公園を後にした。
「さて、どうすっかなぁ」
別に万事屋へ帰れば良いのだが、折角街に来ているのだからもう少し遊びたい。
「あ…金ないんだった」
ツイてない。日曜日で天気も良くて仕事もないのに。
しょうがない、と銀時は万事屋へ足を向かわせた。
帰って月曜日に買ったジャンプでも読もう。
すると、銀時は前方に見慣れた後ろ姿を見付けた。
「あれ、新八ィ?」
掃除が終わり、買い物でもしているのだろうか。
しかし、今は神楽が遊びに行っているので、万事屋の留守を守るのは新八しかいない。
彼がそんな無責任に家を空けるだろうか。
もしかしたら、下に住む大家に留守を頼んだかもしれないが。
まぁ細かい事は良いや、と銀時は新八に近付いた。
「新ちゃーん、買い物?俺手伝お…あれ?」
振り向いた彼は、眼鏡をしていなかった。
しかも、よく見れば着ている着物も朝とは違う。
「あれ、新八?でも何か違う気が…」
「誰だ、お前」
新八よりも、少し低めの声。どうやら人違いらしい。
俺が愛しの新八を他人と見間違えるなんて。
「え、えっと…」
「何で、弟の名前知ってるんだよ。知り合いか?」
「は?弟…?」
つまり、この新八のそっくりさんは新八の兄だというのか。
「マジ…?」
「何で俺が嘘言わなきゃならねぇんだよ」
新八そっくりの可愛い口から、『俺』。
しかも言葉遣いが悪い。
銀時は、不安で胸がいっぱいになった。