銀色の世界
□その手があったか
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高杉は自室で三味線を奏でていた。
しかし、どうも気分が乗らない。
「………」
最後に“あいつ”に会ったのはいつだろうか。
長い間会っていない気がする。
あの憎たらしい銀髪さえいなければ、あいつは自分の物になるのに。
今度はどうやって会いに行こうか、考えていた時だ。
部屋の戸が開いた。
戸の向こうに立っていたのは高杉の部下、万斉だった。
「晋助、少し話があるでござる」
「何だ。というか、戸開ける前に声かけろって言っただろ」
しかし万斉は、高杉の注意に答えず、お構い無しに部屋に入る。
そして高杉の前に腰をおろした。
「実は拙者、今度またお通殿の新曲を作る事になったのだが…」
「そんな話なら帰れ」
高杉はアイドルなど、興味がない。というか、今の高杉は新八の事で頭がいっぱいだった。
「話はこれからでござるよ。今回の作詞はお通殿の親衛隊にも協力してもらう事になってな。それで親衛隊の名簿を貰ったのだが、面白い物を見つけたでござる」
そう言うと、万斉は懐から書類を取り出し、高杉の前に置いた。
「何だ、これは」
「親衛隊の名簿でござる。一番上を見てみるでござるよ」
高杉は言われた通り、名簿の一番上を見た。
【親衛隊隊長 志村新八】
「なっ…」
ずっと恋焦がれている奴の名前。
「何であいつの名前が…」
「文字通り、お通殿の親衛隊隊長だからでござるよ」
そういえば前、部下に調べさせた新八の情報の中にそういうのがあったな、と高杉は思い出した。
その時は特に重要な情報だとは思っていなかったが。
「…で、お前はこいつと会うのか?」
「そういう予定になっているでござる」
「………」
羨ましい。羨まし過ぎる。
高杉は自分が会えないというのに、新八と会う事が出来る万斉に嫉妬した。
「しかし、拙者の顔はもう知られている。他の親衛隊員の前で騒がれたら厄介なのでな、個人的に先に会おうと思うのだが…」
その言葉に、高杉はニヤリと笑った。