腐向け
□けれど愛してしまうのです。
1ページ/1ページ
「佐久間」
自分の名を呼ばれた気がする。
…誰だろう。
「佐久間、」
うっすら目を開いてみた。
茶色くてトゲトゲした頭。
「…源田?」
やっと思い出した。
昨日の夜遅く、俺は親とケンカして、押しかけるように源田の家に泊まって、そのまま…。
後のことはご想像にお任せしよう。男だって口にするのには若干抵抗がある。
「おはよう佐久間。もう9時だぞ?」
源田は白い歯を見せて笑う。起きたばっかりだからか、機嫌の悪かった俺はむすっとしたままで、返事を返さなかった。
「ご飯はリビングのテーブルの上に置いておいたぞ。昨日学校に忘れた宿題取りに行ってくる。すぐ帰ってくるから、いい子にしてて待っててくれ。」
頭をポン、と叩かれた瞬間、なんだか寂しくなって、気付いたら腕を掴んでいた。離れて欲しくなかった。
「…恐い夢でも見たのか?」
「違う」
「…一人が嫌なのか?」
「…違う」
「寝ぼけてる、とか?」
「…それは違う」
「ご飯が一人なのが気に入らないのか?」
「…ばーか」
「…俺が引き止めたんだから行くな。当たり前だろ、ばか幸次郎」
幸次郎なんて呼んだのは初めてだった。言った後からだけど、嬉しがっている源田を見て、なんか後悔した。
「そんなことしたら俺怒られちゃうじゃないか。数学の吉田先生、意外に怖いんだぞ?」
こんなこと言ってるけど、口先だけだ。バカ源田め、ちょっと口元が緩んでる。こんな簡単に言うこときいてたらいつか後悔するぞ、と我ながら思った。
「知ってる。ばか源田は俺より先生からの評価が大事なのかー。愛が足りないなー」
すると、わかったわかった、と言いながら俺のいるベッドの隣に座った。肘を入れようとしたら、思いっきり防御された。イラッときたから、源田の方を向いた。
瞬間、源田の顔がドアップになって、唇が、触れた。
暫く何が怒ってるか理解出来なくて、固まっていたら唇が離れた。源田がニコッとした瞬間正気に戻り、不意をつかれた羞恥からか、反射的にぶん殴っていた。
「バカ源田!ばかばかバカばかバカ!!クソ次郎!源田クソ次郎!!変態セクハラあっち行け!」
俺が大好きで、バカでばかでばかでばかでバカな源田だけど、だから愛しいのかもしれない。
- - - - - - - - - - - - - -
こんな長くなるつもりはなかった。
個人的に佐久間は世界でいちばんお姫様キャラが好きです。
2011/1/19
2011/6/23 加筆修正