腐向け
□暴力的な彼氏
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「…源田、眠い」
「じゃあ寝ればいいじゃないか。わざ わざ断らなくても怒らないぞ」
佐久間は俺の黒革のソファの上で、赤と黒の市松模様のクッションを抱え込んで、ごろりと横になった体勢でそう言った。一方の俺はというと、昨日やり残してしまった宿題を片付けている真っ最中だった。しかも、やり残したペナルティとして、やり残し範囲×15ページ分も課題が増えてしまった。その上教科は苦手な数学…ああ、図形なんて大嫌いだ!
まあそんなこんなで、失礼な言い方にはなってしまうが、今の俺には、佐久間に構ってやる余裕というものが、ほんの一秒さえないのだ。
…そもそも元の原因は佐久間にある。せっかく終わらせた宿題にうっかり紅茶をこぼしてしまったのだ。なのに当の本人は、むすっと不機嫌そうな顔をして、こちらを見ている。そんな暇なら手伝ってくれ、お願いだから。
「…そうじゃなくて」
「そうじゃなかったらなんだ?」
「…う」
「…?なんだ?よく聞き取れなかった 。もう一度。」
佐久間がかすかに口を動かしたのは分かったのだが、何を言ったのかまでは、唇に気を取られ過ぎて分からなかった。
「…ちゅー、しろ…二度も言わせんな っ、バカッ」
そう言うと佐久間は真っ赤になって、自らが抱いていたクッションに顔を埋めた。相当恥ずかしかったのだろうか?
俺は右手のシャーペンの動きを止め、そっと佐久間のいるソファの前に移動し、佐久間の髪を撫でた。
それにぴくっと反応し、顔を上げた瞬間───ちゅっ、と、僅かなリップ音が聞こえ、またそれに佐久間は真っ赤に頬を染めた。
「佐久間、可愛い」
「うっ…うっさい!!」
クッションがみるみるうちに大きくなったかと思ったら、顔面に大きな衝撃を食らった。佐久間の照れ隠しは、とても乱暴的、だ…。
俺は衝撃に耐えられずそのままひっくり返るような体勢で倒れた。…あ、佐久間が慌ててる…可愛い。このまま倒れてたら、もっと慌てて可愛いんだろうな…死んじゃダメっとか言ってくれたり人工呼吸したりしてくれる、かも…。よし、もういっそ、このままでいよう。こうなったら宿題なんてもの、どうでもいい…
暴力的な彼氏
(佐久間の愛情表現=暴力)
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佐久間が好きです(キリッ