お題
□1.こんな想い知らなかった
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恋とは?そう聞かれても漠然とした話しか聞かない。
実際、話をする側ではなく、話を聞く側だったから恋と聞かれても全く分かっていなかった。
それもそのはず。私は初恋というものがどういう物なのか分かっていなかったから。
実際、話を聞くのと自分が体験するのとでは全く違うというのは分かる。
きっと、恋をしているから分かる感情がたくさんあるのだ。
知らなかった。
人を好きになる事、好きになる事で知ったこの想いが、自分を大きく変えるとは思ってもみなかった。
『いらっしゃいませ。何名様ですか?』
彼だ。いつも彼に逢いたくて通い出したお店。
流石に毎日は無理だから2週間に一回の割合だけど。
そうしないと私の小遣いは直ぐに底をつくから……。
逢えない時はたまに遠回りをして窓側から見える彼を見ていた。
見るだけならタダ。見てるだけでこんなにも嬉しくて幸せになるんだから。
恋という物を知らなかった私にとっては本当に変わった。いつも気になる身だしなみが異様に敏感に。
彼に見られるという意識が自然と出ていた。会うのはこのお店だけなんだけど。それでも意識せずにはいられない。
席に案内されてメニューを渡される。限定メニューの文字が目に止まる。
限定と聞くとどうしても食べなくなるのよね。
やっぱり期間限定というのにどうしても乗せられるのは人間の真相心理を上手く使っている。
先月の限定メニューも美味しかったけど、今月の限定メニューも美味しそうと胸が弾む。
『あれがうさぎちゃんの好きな人かぁ。カッコイイね』
『芸能人みたい。うさぎちゃんって面食いなのね』
『うさぎが好きなのも分からなくもないけど、アンタに惚れられて可哀想よ』
『レイちゃん?一言余計よ!』
みんなが見たい見たいと言うから連れてきた。
私が好きという彼を目の前にして、カッコイイと口々に言う。
やっぱりみんなの目にもカッコ良く写るんだ。
『名前は星野。N大学の2回生、顔も良くてルックスもいいから周りの女の子に人気。好きなものはハンバーガー……』
『美奈子ちゃん……詳しいね』
『もち、当たり前よ!これくらいは調べておくのは常識よ!』
そんな常識はないってと心で突っ込むみんな。
『もしかして、美奈子ちゃんも星野くんのこと好きなの?』
『えっ、まっさか!そんなことないわよ亜美ちゃん。私は柳さんがいいの。
星野くんんを調べたのはうさぎちゃんが好きだっていうから跡つけて、いろいろ情報をと思って』
『それってストーカーじゃ……』
『いやね、ちょっと情報収集よ情報収集。
これくらいしないと情報ってのは集まらないでしょ?
決してストーカーじゃないわよ!』
((((いや、跡をつけてる時点でストーカーに近いと思うけど………))))
『それに、現在彼女はナシ!』
『彼女いないって。よかったじゃん!うさぎちゃん』
『あ、……うん』
(そっか、彼女いないんだ。よかった)
心の中でガッツポーズ。
彼女いたらショックだったけど。
いないなら、私にもチャンスはあるかな。
向こうに好きな人がいたらいたで、それも終わりに近いけど、なんとか近づきたい、彼に
『柳さんって?』
『ここで働いてる人なんだけど、今日はいないみたい』
『そうなのよ、今日はバイトのシフトが入ってないみたいで……今日逢えるかなって楽しみにしてたのに……』
『落ち込まないで、美奈子ちゃん!!』
『……ね、あれって逆ナンじゃないの?』
『えっ……』
美奈子ちゃんが言う通り、後ろ側の離れた席で、女の子が彼にアタックしている。
うぁ、凄いなとしかいいよいがない。
当の本人はもの凄く困っている。女の子は断っている相手にお構いなし。