trickbook

□似た者同士[前編]
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体の向きを変え、奈緒子に向かい合った時にかっこつけようとして手を置いた車の上が、太陽の熱で熱くなっていた。

「あっつ!」
「!大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫じゃよ…」
「………この感覚懐かしー!石原さんに会いたかったんですよー。どうしてるかなと思ってたんで。広島弁聞いたの久々です」

会いたいと思ってくれていた………石原はそれだけで感動した。

「…2、3年ぶりかの?」
「もうそんなに経ったんですね」
「早いもんじゃのう。あっという間じゃ」
「ホントですね」

実はずっと広島に来てから学者先生と彼女が恋仲になっているかもしれない、そんな事を気にしていた。
いや、お互いに想っていても気付いていないと思っていた。
類は友を呼ぶっていうやつで、学者先生とこの女はなんだかんだいいつつ同じようなタイプだから相性はいいんだろうなとか。

これが恋っちゅうことなのか?

石原はこれまで素敵な女性に出会っていない。きっとそれは仕事に力をいれてきたからだ。

恋はあかん、兄ぃにそう言われた。

「……」
「……」

お互いにきょろきょろしながら黙ってしまった。
奈緒子も奈緒子で考えていたからだ。
今まで石原とはろくな会話をしたことがなかったため話題ゼロで困った。
どう接したら良いのだろう。
自分と歳が近いだろうということは解っていたが、あの教授との関わりの方が多いのである。

「あー……えと、事件ですか?」
「い、いや、今日は…」
「またさぼってたんですか?」

随分可愛らしい顔をして笑っている。

「ち、ちゃうよ!今日は事件無く平和な日なんじゃ」
「へぇー?」

疑いの目を向けている奈緒子に眉を吊り上げた阿呆な顔して見とれた。
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