trickbook

□大切な話
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「YOU!起きろっ!」
「助さん…とんかつには普通…………………」



「……………」





















「…………ソースですよ…」
「……
山田のおでこをぺしぺし叩き、起きるまで揺らした。


上田がせっせと山田を起こし続けている間、上田次郎の研究室では……


むしゃむしゃむしゃ


物を食べる音が微かに響いている。
「おい石原、俺らなんでここにおんねや?」
矢部と石原だった。
「そりゃあ、兄ぃ、上田先生が大切な話があるっちゅうからじゃよ。すぐ来てくれって」
「俺らも暇やないんやで。それに大切な話って別に事件じゃないんやろ?」
「まぁ…そうみたいじゃがのぉ…」
矢部と石原は上田の研究室にあったおかしをぼりぼり食べながら上田を待っていた。
「なぁ、石原」
「はい?」
「俺さぁ、思うんやけど…上田センセとあの女って…この先なんもないんかなぁ」
眉間に皺を寄せ、ボソッと呟いた。
「センセは俺と同じ世代ぐらいやけど」
「?!」
「あの女は一回りも下やろ?センセもそろそろ…結婚せなあかんお歳やろぉ…俺思うんやけど〜あの二人って…付きおうとるんかな」
「いやぁ〜……どうじゃろう…」
石原は内心びくっとし、ちょっと焦りながら呟いた。
「わしは…考えたくないのぉ」
「なんでや?あ、おまっ、もしかして…あれか?」
「い、いやっ」
「お前!あの女が好きなんか?!」
「いや!ちゃうよ兄ぃ!なんちゅうか…その〜…あれじゃよ…」
矢部は隣でにやにや笑っている。
研究室のドアの前でようやく起きて戻ってきた奈緒子は目を見開いた。
「そうなんやぁ」
「ちゃうよ兄ぃ!」

ドンっ

ドアが勢いよく開いた。
「!!」
「おぅ山田!」
「何してるんですか」
石原は驚いて矢部の背中とソファーとの間にヘアスタイルお構い無しに顔を埋めた。
「やあぁぁぁぁ!」
「ちょっとおまっ、う、うざ!」
奈緒子はばたんとドアを閉め、二人の前に仁王立ちした。
「何してる」
「何って上田センセに、ちょ、呼ばれたんや」
背中の石原をうざがりながら答えた。
「石原さん!」
「ゃぁぁー!………」
矢部の肩に両手を置き、体を起こすと横目で恐る恐る山田を見た。
問い詰められるに違いない。
そう思ったが、意外な質問だった。
「……………なんでいるんですか?」
「は」
「広島に行ったんじゃ……」
「姉ちゃん!この間会ったじゃろうがぁ!」
がばっと立ち上がり今にも攻撃しそうな石原を矢部は押さえた。
「い、石原っ」
「会った時に言わんかったかのぉ?!もう忘れたんかい!あ゛ぁ!」
「石原ぁ!」
ぼこっ
「あ、ありがとーございます!」
「落ち着いてぇーはいー深呼吸を忘れずにぃー」
奈緒子は石原に驚きつつ、考えてみた。
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