trickbook

□似た者同士[前編]
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なんだかあの二人は似ていると、
思った。

似ているところといえば、意地っ張りな性格だったり素直じゃなかったりするところ。
プライド高かったり。




似た者同士



あの先生には敵わない、そう思っちょった。
憧れていた。
頭が良くてかっこいいし、強い。
わしとは正反対の人間。

だからあのおなごも惚れるんじゃろな、って思っちょったんじゃ。



石原はそんなことをいつも考えていた。
この暑い広島で。

石原は広島に赴任してきて早2年が経つが、どうも肌に合わないらしい。
憧れていたはずの広島で毎日ぼーっとして過ごしたり、刺激のない事件を任され、ただ力の消耗をしに外へ出る。
東京警視庁にいた頃は可笑しな事件を任せられて、めんどくさくてもわくわくするような事ばかりだった。
『憧れの広島』のはずがどうしてこうも違うのだろう。

そして、いつも一緒にいた仲間もいないのだから調子が狂う。
矢部も、上田も、山田もいない。

「はぁぁ…」

車から降りて自前の外車に寄りかかり、深くため息をついた。

今日は特に事件は任されていない。
パトロール、と理由をつけて出てきた。本当は自分がする事じゃないけれど。
首を回し、軽くストレッチをすると懐かしい声がした。

「あ…石原さん!」

斜めに首が傾いたまま声のする方を向くとずっと気にしていた人物が近づいてきた。

「………えぇぇっ?!ね、姉ちゃん!」
「お久しぶりです!」
「なんでおるんじゃ!?」
「福引き、当たっちゃったんです。広島旅行」

こんな奇跡があっていいんだろうか。
石原はまさかのドキドキを感じ始めた。
なんでこのおなごごときに…。

「おぉーそりゃ良かったのぉ!偶然じゃのぉ〜」
「もしかしたら、と思ってたので会えて良かったです」

会えて良かった…?
この場合、社交辞令とゆーやつじゃろか。
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