trickbook

□大切な話
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上田次郎の大事な話


雀が一羽とーまってー…一羽の雀がゆうことにゃー

着うたにパワーアップした六ツ墓村手鞠唄が鳴り、あの刑事が電話に出た。
「はいはーい、こちら兄ぃの携帯じゃよ♪」
この声はオールバックの石原だ。
『石原さん?久しぶりですね、上田です』
「をぉ!先生かい!久しぶりじゃのぉ♪」
『いきなりですが、大切な話がありまして……』
「兄ぃに替わろうかの?」
『いや、大丈夫です。今から大学に来て欲しいんですが…』
「了解じゃ」
『それじゃあ後で』

‥…──

都内にある大きな建物。
看板には大きくこう書かれている。

『日本科学技術大學』

その大学を一人の女がめんどくさそうに溜め息をついて見上げていた。

私の名前は山田奈緒子。いまをときめく超実力派天才マジシャンである。とてもスレンダーで美しいと評判だ。
嘘じゃないぞっ。
ある日あの臆病な上田教授に呼ばれた。せっかく休暇を楽しんでいたのに。
天才マジシャンな私は超多忙なのだが、仕方なく来てやったのだ。
「………YOU」
「何ですか」
「これから講義があるんだ。だから待ってろ」
「は?超多忙な私がせっかく来てやったのに待たせるのかっ」
「ふっ。どうせまたクビになったに違いない」
不覚にも黙ってしまった。
私としたことが。
「図星だな。とにかく今日は…ったく仕方ないな、そんなに俺と居たいか。なら特別に俺の講義を受けさせてやる」
「んなこと言ってない」
あの山田は楽しそうにるんるんしながらついてきた。(嘘)

綺麗な私にどうしても、と上田が頼んだので仕方なく見ることにしただけだ。(嘘)

山田はよくある大学の段になっている講堂の上の方に座った。照れやがって。

数分も経たないうちに私は眠気に誘われ、寝てしまった。実にどうでもいいからだ。
「これは第一に…」
上田の声がどんどん遠のいてゆく。

どれくらい経っただろう。
まだ30分前後じゃないか。俺はちらっと上を見るとあの女はお構い無しに机に突っ伏して寝ていた。大きないびきをかきながら。
ためになる話を聞かせているっていうのに……。
「……んにゃっ!」
大きな声に学生全員が振り返った。
「気にするな。えー、これは」
「…助さん…格さん……」
「かまうとろくなこと無いぞぉー」
相変わらず寝言が大きい女だな。
「じゃあ……とんかつ…食べましょうか……」
どんな夢だ…!
「仕方ない……研究室に帰そう」
「教授、この方は?」
「108番助手の山田だ」
「教授はそんなに助手がいらっしゃるんですね」
おぉ、と声があがった。
まぁな、と笑って山田のところまで上がって行った。
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