trickbook
□現実は嘘つかず
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嘘はもう嫌。
「勝手に殺すな。ベストを尽くしただけだ」
「……」
「ふふっ、死ぬ訳にはいかない。YOUが寂しがるからな」
「……」
「……朦朧とした意識の中、ベストを尽くして戻ってきたんだ」
あぁ、この人はバカなんだ。
あんなことになったのに
大きな衝撃だったかもしれないのに
暢気にベストを尽くしたなんて。
「…死ぬのは嫌だった。YOUの恐ろしく貧乏な姿とかくだらない手品とか見れなくなるのは寂しいしな」
「……」
「忘れるんだ。全部。いいな?こんな傷くらいどうってことない。俺は強い天才物理学者だからな、ふっふっふ」
「……」
「……好きな女を放ってはおけない」
「……」
「……」
じっと目を見つめて、無表情でいた。
泣きそうだった。
でも私のポーカーフェイスは最高だから
精一杯我慢をした。
「……」
「………なんか言えよ」
「……お」
「そうじゃなくて」
「……」
「なんか…反応は無いのか」
何もない。
この世にこの人がいることが私には大きい。
言うことなんて…。
「………嬉しいです」
これくらい。
「何が?」
「………生きている事」
「……」
「……よかった…生きてて」
最高のポーカーフェイスな私でも、こればっかりは泣きそうだった。
だけど頑張ったんですよ。