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□大切な話
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「それって…つまり…」
「勘違いするなっ」
「ふふっ………YOUこそ嘘をつくな」
「ホント教授として失格だ。上田さんの本当のファンなら着いてきますよ」
「YOU「私は違います」」
「そんなに嘘つくとYOUは「だから違うって」」
「……」
奈緒子はため息をついて立ち上がった。
「私は………」
いいかけた言葉を呑み、言い換えた。
「…もう帰ります」
「待てよ」
大きなかばんを手にしようとした奈緒子の腕を掴んだ。
「離せ」
「いや、離さない」
「!…は?」
「………………から…」
「何?」
「…な、直す……から……な……その、あれだ…居てくれよ……側に」
「…え……」
上田の顔は赤く染まり、照れたようにちらちら見ている。
ど、どうしよう…こいつ本気だ…。
「…あ、あの……腕、い、痛」
「すまん……でも…」
「上田さん」
「ん?」
「な、なんで…」
「…その……居てくれないと…こっ、困るんだよ。なんていうか、その…す、すす好き…だからに決まってんだろ」
あぁーやばい。どきどきしてきた…。体が熱い。
奈緒子も顔が真っ赤になり恐る恐る上田を見上げる。
素直になれと言ったすぐ後にこんな形で素直になられるとは思ってなかった。
「す、好き?!」
「言っただろ、前に一度。同じことを君に言ってるのだが」
あぁそうだった。

『──断ったじゃないですか』

あの島の事件のあと…門構えに火を連呼していた。その後も今のように好きだと言った。あれから無視し続けて数年。
「今さら何を驚いてる」
「だって……す、好きって言葉…慣れてないんだ」
「好きだ」
「おい!」
「…YOUには嘘はつかない、でも本は許してくれ、今さら変更するわけにもいかない。な?」
「えぇ!?」
なんか納得いかない。どう考えても納得のいかない変な理屈だ。
だけど…本気なんだ、こいつは常に。
「……YOUは…」
「上田さん」
「え?」
「………ホントに…大切な話って名誉教授になったことですか?」
「………」
「もちろんそれもだと思いますけど…」
「…名誉教授の話はもちろん本当だ。それはYOUを呼ぶ口実にすぎない。他に用件が見つからなかったんだ」
「………」
顔が熱い。
上田が掴んでいた腕は少し赤く染まっていてじんじん脈をうっているようだった。
こいつといると何もかも狂う。
「ゆ、YOU……俺は」
「もういいです…十分ですよ……あ、ありがとうございます…。私…ず、ずっと……こんなこと…無いと思ってました…」
「………」
「う、上田さんは頭良いし強いし…大きいし…体。歳だって離れてるし、ほ、ほらっ上田さんて綺麗な人好きだし、だから」
「十分綺麗じゃないか」
「え」
さっきの動揺が嘘みたいにこいつは冷静だ。
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