trickbook
□冬来たりなば、春遠からじ
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「ーーー!なんでだ!」
「?………大凶?ふっだろうと思ったよ」
「ーーー!」
上田は自分のおみくじをじっくりと読み、とある項目を見つめた。
【恋愛─すぐそばまで来ている─】
「……すぐ…そば…」
横で結果に嘆き悲しむ奈緒子を見た。
「大…凶…」
「ま、良かったじゃないか」
「どこがだ!大凶ですよ?大の、凶!」
「大凶はむしろ運がいいとも言われてるいる。ほら、ここにも〔冬来たりなば、春遠からじ〕、と書いてある」
「…?どういうことですか?」
「寒い冬が来ようともすぐに暖かい春もやってくる……どんなつらい状況でも必ず良いことは廻り廻ってくるということだ。下まで落ちたらあとは昇るだけしかない」
「……なるほど…」
上田は自分のおみくじを糸に結びつけた。
「大凶は木に結びつけるといいらしい」
言われた通りに木に結びつけ、小さく礼をした奈緒子に小さく笑って先を歩いた。
「置いてくぞ」
「あ!ちょっと待ってくださいよ」
「次はパワースポットだな」
「また並ぶのか!?」
おみくじがどこまで真実になるのかは誰にもわからない。
そしてどこの分岐点で自分の運命を変えるのか。
寒い冬を越せば暖かい陽射しに包まれた春がくる。
もしかしたら奈緒子にだって暖を取る術が見つかるかもしれない。
例えば、新しく暖かい家具をゲットするとか、食料に困らなくなるとか………隙間風が吹かない部屋に住む、とか。
「そういえば、俺引っ越したんだ」
「え!あのマンションから?」
「ああ。ふふっもっと広いとこ借りたんだよ。名誉教授ももうすぐそこだ。引っ越し手伝え、YOU」
「なんで私が?」
終