trickbook

□夢のまた夢
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「でも本当に気をつけてください。上田さんより先に喫茶店から出てきた人も夢に出てきたんです」
「……誰だよ」
「胡散臭い人。嫌味ったらしくてムカつく顔のおじさんです。誰だかわからないけど……。とにかく…どこにも…行って欲しくない…から…」
「……」

殻になった珈琲カップを見つめ、眉間に皺を寄せて上田はゆっくりため息をついた。

「……行くか行かないかは俺の自由だろ」
「そう…ですけど…私に会えなくなってもいいのか!弱虫のくせに」
「大丈夫だよ。夢は夢だ。俺を信じろ」
「……私を信じろっ」


泣くな、私。


「…YOU。ただ俺を信じていてくれ。居なくならないから。絶対」
「……」
「絶対だ。約束する」



─…‥

それからしばらく上田からの連絡はなかった。

「上田……」


そしてニュースを聞いたのはあれから1週間経った日の午後だった。
ニュース番組の見出しはこう。

『飛行機墜落事故』

画面を見ていても言葉が一向に耳に入ってこなくて、そのままテレビを消して家を出た。

そんなはずない。
きっと街を歩いていれば出会えるはずだ。

「YOU」

行く宛もなく街を歩いていると目の前にはあの長身の男が立っていた。

「上田さん!!」

傷ひとつなく、大きな荷物もない姿で笑っていた。

「行かなかったんですか!?」
「行くなって言っただろう」
「そう…ですね……」
「あんなに言われたら行けないだろ」

上田はゆっくり奈緒子に近づいた。

「俺はここにいる」

 
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