trickbook
□嵐の夜
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「久しぶりだな」
上田はやけにニコニコしている。
「………そうですね。最近…何してたんですか?」
「出張でな、ちょっとあちこち行ってたんだよ」
「……へぇ〜大学の教授も出張とかあるん、ですね〜…」
時折妙な反応をする奈緒子を感じながら話を続けた。
「出張講義というやつだな。あちこち行けて楽しかったよ。それにな、再び僕の人気が出てきたらしい。また執筆を頼まれてるんだよ。はっはっはっ」
「…………ふーん。どうせまた、売られ…ちゃいますよすぐに。!」
「ふっ、それだけ人気があるってことだろ」
その時、鋭い音と共に突風が吹いた。
「!!」
「うぉう…これは近いな」
上田は窓の外を覗くと今度はガチャン、という音がした。
このアパートの大家であるハルさんの家ではもう既に被害が出ているようだ。