trickbook

□七夕祭り
6ページ/7ページ


瀬田一彦


とある人物はこちらに向かってくる2人組をチラリと見た。
ちょうど女が自分に見つからないように隣の男の後ろに隠れる瞬間であった。





上田は立ち止まり、こちらへ向かってきた人物を見下ろすと目の前の男はその迫力に圧倒されながら上田の後ろをチラチラと確認していた。

「なにか」
「いえ…あの…。あ!」

男は後ろから少し顔を出した奈緒子を見逃さなかった。

「奈緒子!やっぱり奈緒子だ〜♪」
「!!ちょ、や、やめろ!」

上田は奈緒子を無理矢理自分から引き離した。

「…ど、どうもっ。お久しぶりです…」
「それで……あなたは?」
「あの、もしかして上田先生?えっと大学の教…「日本科学技術大学教授にして天才物理学者、上田次郎です」」
「……あぁ〜…里見さんから聞いたことありますよ。僕は瀬田一彦と申しまして、長野県長野市市議会議員をしております。医者の免許もあるのでよく助っ人を頼まれたりするんですよね。へへっ」
「……ほう」

上田は見下ろしながらクスッと笑った。

確かこの人が市議会議員だった期間は短かったはず。俺が政治的なことを知らないはずがない。

彼は見栄っ張りなのか。

「お会い出来て光栄ですね」
「そ、そうですね〜ははは」

鋭い目に見透かされている気がして瀬田は奈緒子へと視線を反らした。

「奈緒子の浴衣姿、懐かしいなぁ〜」

その発言に上田は眉間に皺を寄せた。

「相変わらず可愛いな、奈緒子は」
「…それ以上言うな」
「照れるなって〜」
「あのー…」
「上田先生は奈緒子とはどういうご関係なんです?まさか…恋人…!?」
「ま、まさか!んなわけないだろっ」
「彼女は僕の、助手です」
「あぁ助手ですか。なんだ、安心したよ〜」
「…。瀬田さんは山田とは…」
「幼馴染みです。な!」
「違います」

瀬田のこれまでの反応を見て上田はすぐに彼が山田に好意をもっていることを察した。
瀬田は見るからにめんどくさそうな人だ。

「僕は小さい頃から君とよく遊んでたし面倒見ていたじゃないか。幼馴染みみたいなもんさ」
「勘違いしないでください、私そんな記憶全くないぞ」
「ひどいな〜!まぁ今日奈緒子に会えたから良かったよ。ずっと心配してたんだ〜いつ帰ってくるのかなと思ってさ…」
「……」
「……寂しかったしさ」
「…。こんなやつほっといて行くぞ、上田」
「え!もう行っちゃうのかよ〜」
「ほら上田早く!」
「……」

奈緒子は無理矢理上田の腕を引っ張り歩き出した。

「ちょ、奈緒子〜。ねぇ奈緒子ちゃーん!」



─…‥
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ