trickbook
□七夕祭り
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食いしん坊の奈緒子
せっかく褒めてやってからというもの彼女はあまりしゃべらなくなった。
別にしゃべらないこの瞬間は嫌いではないのだが、彼女はどこかぎこちなかった。
微妙なテンポでぶらぶら歩いているとやっと彼女が口を開いた。
「お腹空いた…」
「何か食うか」
「あ、でも私お金…」
「俺が奢ってやるよ」
「え、でも…」
「俺が奢るという条件でYOUは祭りに来る気になったんだろ」
「あ、そうか…」
事件でもなんでもないのに彼女を誘うのは俺だって勇気がいる。
うまく誘うことに慣れていなかったせいでつい奢ってやると言ってしまった。
だがそう言った事で彼女は来てくれた。
後悔はない。
なんせ俺は教授だからな。
こんな屋台なんて安いもんだろ。
初めはそう思っていた。
彼女は予測不能である。
「うーんと、じゃあ最初はやっぱり焼きそばですね」
「いきなりそれ行くのか」
「お祭りといえばですよ」
焼きそばを買ってすぐ側のテーブルで食べ、そして食べ終わるとすぐに立ち上がり次の食べ物を要求した。
いつになったら満腹になるのか。
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