りく

□本日も至って平和
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リボーンとコロネロと









興味のある事には積極的に取り組むこと。そう一度教えてはみたが、綱吉は首を捻るだけでそれを実戦に移そうとはしなかった。
まあ引っ込み思案だからな。
リボーンはソファに座って銃を磨きながら、向かいのソファの後ろから顔を覗かせているちっちゃい生き物を見た。
目が合うと、すぐにソファに隠れる。
そして時間が経つと再び顔を覗かせる。
で、また目が合うと隠れる。
それをいくらか繰り返した後で、リボーンは綱吉に手を伸ばした。



「おいで」



ニッと笑ってやれば、おずおずと足を伸ばし、一定のラインを越えるとてちてちと走ってくる。
リボーンは正面まで来た綱吉をヒョイと抱き上げて、膝の上に乗せた。



「今俺が何してるか分かるか?」



銃をいじりながら問えば、綱吉はううんと首を横に振る。
素直なのはよろしき事だ。
ザンザスだとこうは行かない。



「ほら、ツナ。持ってみろ」

「んぅ」

「どうだ?」



大事な相棒ともいえる愛銃を綱吉に持たせて、リボーンはその様子を眺めている。
綱吉は銃を持ち上げては色んな角度から眺め見て、挙げ句銃口を片目に近付けて中を覗き見ていた。
危ない。
しかし中身は取り出してあるので大丈夫な筈だ。



「おもい」

「そうか。後はどうだ」

「んー……くろい!リボーンとおんなじ」

「そうだな」

「かっこいーよ」



えへへーとポヤポヤと笑う綱吉は結構貴重だったりする。
大体訓練時に泣いているお陰で不機嫌であったり、ぶすーっと頬を膨らませていたりするのだ。
こればっかりは仕方のない事だが。
ああ、でも。
晩御飯が好物だったりすると急に陽がさしたようにパァアと輝かんばかりの笑顔を晒したりする。
晩御飯のメニューによって綱吉の中のスカルの好感度は上昇中だ。ちょっと悔しい。
だがこうして懐いてくれているには代わりないのだ。
リボーンはヨシヨシと綱吉の頭を撫でてやった。
綱吉は猫みたいに目を細めてクスクス笑っている。
その間、足をパタパタとせわしなくバタつかせているのだがこれは癖なのだろう。



「明日からお前にも銃のイロハを教えるからな」

「いろはー?」

「そうだ。とりあえず今構えてみな」

「どう?」

「こう」



後ろから腕を回し、構えの体勢を取らせる。
その間に抜き出しておいた弾を含ませて、窓の外でペットのファルコと戯れている目障りな金髪に銃口を向けさせた。
綱吉は未だキョトンとしている。



「お母さん指、引いてみろツナ」

「ん!」



ズガァアン、と。
耳をつんざく音。
発砲時の反動は綱吉に伝わらないようリボーンが押さえてなんとかしたが、大きな発砲音には目を白黒させていた。



「ふっざけんなコラァアア!!!」

「クククッ、ツナ、お前才能あるぞ!」



コロネロの前髪をかすった銃弾にリボーンはギャタギャタケラケラ、愉快だと腹を抱えて笑っている。
逆に綱吉はといえば、「たいへんだ!」と声を上げた。



「コロネロがおこっている!」

「おー。んじゃ、逃げるかツナ」

「ふわっ?!」



綱吉を腕に抱えて走り出す。
ビックリして目を丸くした綱吉は、後ろを振り返り凄い形相で追い掛けてくるコロネロを見た。
恐い。



「にぎゃぁああ!!いやーっ!!」

「コロネロテメー恐がられてるぞ」

「ふざけんなコラ元凶はテメーだろうがリボォオン!!」



折角の笑顔がまた涙目に変わってしまっている。
追い掛けっこも大切な訓練のひとつだ。
スリリングな空気になれといて損はない。
(ワリーなツナ、全部お前の為だ。今はただ我慢だぞ)
口には出さないが、リボーンは脇から腕の中に綱吉を移動させ、だっこの状態で足を動かした。
すると後ろ向きになるので、必然とコロネロの恐いお顔が良く見える。
つまり殺気もビシバシと綱吉に当たるという結構酷な体勢だ。
ぴょーいと手当たり次第に入った部屋の窓を越え(※2階である)庭に降り立つ。



「こわっ、こわいぃっ!」



ひぐひぐどころかうえうえとやりだした綱吉に、若干コロネロも嫌な汗をかき始めた。
何故だ。
こっちは被害者だというのに。
酷い話もあったモンである。



「クソッ……ツナァ!後でケーキ奢ってやるぞコラ!」

「ふぇっ?」

「だから少し我慢しろ!!」



カシャッと音がして振り向けば、コロネロがライフルを構えて居た。
チィッ。リボーンは舌打ちをして、コロネロがトリガーに指をかけた瞬間綱吉を空高く放り投げた。
綱吉はヒィッと息を飲み込み、大きく開いた目から涙をポロリと落とす。
ひどい。ありえない。
こわい。こわい。
とってもこわい。
そう再度幼い脳が認識したところで、重力が綱吉を引き寄せる。
となりではコロネロがリボーンに銃をぶっぱなしている途中だった。
落ちる!
目をぎゅうっと瞑り、痛みを待てば手首を引っ張られた。
なんだろう。
目を開く。
目の前には、ラルが髪を爆風にナビかせて格好良く綱吉を抱きとめていた。



「うっ、うぇっ、ふぇっ……」

「………貴様等」



本泣きに入りそうな綱吉はがっちりラルの腰を足で挟んで引っ付き虫モードだ。
ラルの冷えた声がリボーンとコロネロを捕える。
やべぇ。
流石にリボーンとコロネロも動きを止めてラルとツナを見た。
どうやらやりすぎてしまったようだ。



「ツナを巻き込んだ罰として3日間飯抜きだ!!!あと破損した部分の修理は貴様等でどうにかしろォ!!!」

「「うげっ……」」



リボーンとコロネロが顔を歪めたのと同時に、綱吉の顔もくしゃっと崩れる。
そうして大きく息を吸い込み―――……



「むっ、ぎゃぁぁあああああああああッ!!!!」



本日も盛大な綱吉の鳴き声が辺りに響きわたるのであった。
こうなってしまえば、ケーキでご機嫌取りも難しい訳で。



「リボーンとコロネロなんてきらいきらいきらい!だいっきらーい!!」



びぇーん!と大泣きする綱吉の言葉にグサリとやられた男共を見て、ラルはフンと鼻を鳴らした。
何事もやりすぎないという事が大切なのである。




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