りく

□俺+お前−腐れ縁=上々
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そう。世の中の大人は、いいよなー学生は!なんて言葉を簡単に吐く。
確かに学生は、気楽な生活を送っているヤツが殆んどかもしれない。
けれど今日を必死で生きているヤツだっているのだ。


そんな必死で生きているヤツの上位に君臨する綱吉は胸中で溜め息を吐き、自分の席に縮こまりながら恐る恐る目の前でいがみあっている二人に目を向けた。
片や漆黒の美と称賛される程に美しいイタリア生まれイタリア育ちの頭脳明晰容姿端麗スタイル抜群の何様俺様リボーン様。
どちらかと言えばインテリ系でフェロモン満載な彼は、他人の上に立つのがお好きなようだ。
そして片や金髪碧眼、獰猛類の様な鋭い瞳を持ち、こちらもリボーンにひけをとらない程の格好良さ。イタリア生まれイタリア育ちの文武両道容姿端麗スタイル抜群の何様俺様コロネロ様。
コロネロの場合はリボーンとは違い、頭は良くともインテリ系では無く寧ろ熱血系。
ただ他人の上に立つのはこちらもお好きなようである。

そんな似て非なる生き物達は並盛高校2年B組に揃って在籍していた。
頭の良さがウルトラ級の彼等が何故揃って並高に入ったかなんてのは知らないし、今後知られる事のない永遠の謎となるだろう。
寧ろ綱吉からしてみれば、知りたくもない事実だった。というより、知らなくていい。知らない方が身のため。
この二人は、綱吉の中であまり関わりたくない生物としてインプットされているのだ。



リボーンとコロネロは並高のアイドル的存在でもあった。
生徒会長であるリボーンが壇上に上がるだけで女子は発狂するし、コロネロがサッカーの試合に出ればなぜか他高の女子がこぞって並高の応援に回って下さる。
男子からの声援も絶大だった。
だからこうして二人が肩を並べているだけで他の生徒達はきっと生唾ものだろう。
そしてそんな生きる芸術作品を目の前にしている綱吉とどれ程代わりたいと思っている事だろう。
でも違うのだ。
実際は、現実は。
そんなに甘い事なんかじゃあ無いって事に、16歳という若さにして綱吉は早くも気付いている。



「ふざけんな。ツナは俺の下僕だっつってんだろーが、この脳無しヤローが」

「うるせぇ女垂らし。コイツは俺の下僕だコラ!」



本人を目の前にしてどちらの下僕だなんて討論をする二人の気が知れない。
綱吉は嗚呼もう嫌だと耳を塞ぎたくなった。
だがここで「うるせぇのはお前等だ俺は誰の下僕でもない我は我だけの為に有り!」と叫んだとしても病院送りなのは目に見えているので(というかそんな勇気は元々持ち合わせていないので)綱吉は静かに事の成り行きを見守っている。
暴力で無い分マシだ。
この二人はいつだって本気なので、シャレにならない。
けれども、腹が限界を迎えている。
チラリと黒板上の壁掛け時計を見れば、昼休みはあと5分で終了というところまで来ていた。
綱吉の腹の虫が、ぐぅと鳴く。



「あの……」

「何だ。見て分かんだろ、今取り込み中だ」

「いや、そうなんですけど」

「フン、テメーの顔はもう見飽きたとよコラ」

「あぁ?」

「い、いいいいいや!!違います違いますからそう睨まないで下さいぃ…!」



同級生に敬語とは残念にも程があるが、上下関係が目に見えてハッキリしているので仕方がない。
どこぞの風紀委員長の言葉を借りれば、彼等は立派な肉食動物。
変わって此方は草食動物、否、雑草程度の人間である。



「さ、三人で食べたらどうかな……?って…」



つってもあと5分だけどな。
内心とは裏腹に、控え目に怯えながら提案する綱吉に二人は思いっきり嫌そうな顔をした。



「何で俺がコイツと一緒に昼飯食わなきゃならねーんだ」

「飯が不味くなるぞコラ」

「でも……そうでもしなきゃお昼ごはん食べれなそう、だし…」



チョイ、と時計を指差した綱吉に二人は漸く昼休みも終盤に掛っていることを知ったらしい。
チィ、と揃って舌打ちをしてくれた。



「まあ俺の昼休みの為に5時間目は自習にするとして……仕方ねぇな。ツナがどうしてもっつーなら今日は勘弁してやるぞ」

「俺もコイツと一緒に飯なんて死んでもごめんだがツナの頼みなら飲んでやらなくもないぞコラ」

「えっと……ありがとうございま、す?」



何でかもーツナったら我儘ばっかり仕方ないわねぇ、な雰囲気になったので綱吉は疑問を覚えながらもとりあえず感謝の言葉を述べておく。
にしてもリボーンの昼休みの為に授業を潰される教師もたまったものではないハズだ。
生徒会長になり権力を駆使して裏から表まで学校を顎で使うリボーン様には、頭が上がらない。
反抗した教師があらぬ写真をとられて自宅に郵送されたとか、リボーンのお陰で並高では良くある話になってしまった。
最近では、授業中いつも綱吉ばかりを指名し出来ない事を知っていながら恥をかかせていた教師が遠い島国まで飛ばされている。
どうやらその行動がリボーン様のお気には召さなかったようだ。
因みにコロネロは権力を裏で操るのは嫌いらしく、その様子をただ眺めているだけであった。
綱吉は知らないが、その教師の考えている事を二人は鋭い観察眼で察知していたのでコロネロは何かあった時に行動しようと心に決めて居たのだ。
例えば、綱吉が補修だと言われてノコノコその教師の後を付いていき襲われた時にでも。



「んじゃ、弁当持って屋上行くぞ」

「早くしろコラ」

「う、うん…!」



待ちに待ったご飯だ。
かなりの貧困感を漂わせる綱吉だが、あながち間違ってはいない。
リボーンとコロネロが裕福な貴族のおぼっちゃまならば、綱吉はそのくらいが妥当だろう。
そんな切ない状況下の綱吉は鞄の中から即座に弁当を出し、リボーンとコロネロの後に付いていく。
足のリーチが違うので、駆け足になってしまうのは必須。
それでも柄になくリボーンとコロネロが歩幅を狭めてくれるので、綱吉は少しだけ感謝をしていた。









「ツナ、その玉子焼きくれ」

「えっ」



ヒョイッ



「俺はこのウインナーを貰うぜコラ」

「ちょっ……、」



ヒョイッ、ヒョイッ。
オーケーの返事を貰う前から好き勝手に人の弁当を荒らす二人に、綱吉はぐうと唸り箸を噛む。
せっかくご飯にありつけたと思ったのにコレだ。
生憎と空は綱吉の気分とは逆に、腹立たしい程晴れていた。正に快晴。



「にしてもお前、もっと食って太った方がいいぞコラ」

「菓子ばかりじゃ体にも悪いしな」



誰のせいで毎回毎回空腹に陥っていると思ってるのだろうか。
誰の与えるストレスで痩せていくと思ってるのだろうか。



「いや……ソウデスネ」



でも否定なんかできやしない綱吉は、黙ってタマゴフリカケのかかったご飯をパクりと口に運んだ。



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