にじのゆめ、ひかりのあめ

□太陽/逆位置
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【太陽/逆位置】




全て上手く行っていたと思っていた。
否、思っていただけではない。
実際に。事実上。
全て事は上手く運ばれていたのだ。
それなのに何故急にこんな変化を見せたのだろうか。
分からない。
分かりたくもない。
腹立たしい。
兄弟だなんだと言われたって愛に壁なんかは無いのだし、人間欲望のままに生きたっているはずもない神様に罪を下される事も無い。
悪役非道だと言われたって構わないのだ。
綱吉を手に入れるのは自分。
そう。
そうやってこの物語は進んできた筈なのに。



「聞いてねーぞ、バカツナ」

「いでっ」



自分よりも小さく、斜め下にある兄の頭を7割程度の力で殴り、その兄の横に居る同胞、もとい腐れ縁を睨みつける。
元々コロネロの存在を気に掛けていなかったのが悪かったのかもしれない。
別にコロネロが並盛中学にいたところで、それはリボーンにとってどうってことない寧ろどうでもいい興味が湧かない事項であったのだが。
まさかこの男が綱吉に手を出してくるとは思わなかった。
相手もまさか自分が綱吉の兄弟だとは思わなかったみたいだ。
当然だろう。
コロネロとはただ同胞なだけで身内については一欠片も話していない。
綱吉の頭上で殺気が飛び交う。
綱吉は殴られた頭を摩りながら大きく溜め息を吐いた。



「仕方ないだろ?成り行きでそうなっちゃったんだからさー」

「そういう事だ。残念ながら諦めろコラ」

「うるせぇテメーにゃ聞いてねーんだよこの筋肉馬鹿が」



何が残念ながら、だ。
頭カチ割られたいのかコノヤロー。

明らかに鼻が高くなっているコロネロに軽く舌打ちをしておく。
最悪だ。
なんでよりにもよってコイツ。
まだ獄寺や山本の方が良かった。
奴らの方がまだ可愛げがあるといった所だ。
有り得ない。
ふざけるな。



「リボーンも知り合いなら仲良くしろよなー」

「お断りだボケ」



ケッと悪態をついて(リボーンが悪態をついているのはいつものことだ)誰がこんな奴と仲良くなるかと呟く。
コロネロもコロネロで無理言うな、と綱吉に申していた。
多分コロネロとリボーンが仲良くピクニックなんて行く日が来たらそれは間違いなく地球が滅亡する日だろう。
降ってくるのは、雨や雪や槍といった可愛らしいものなんかではない。
隕石だ。
確実に隕石が地球に降り注がれる。



「お前……うわべだけでもお断るなよ。仮にも兄貴の恋人だぞ」

「知るか黙れ死ね」

「おいっ!ほんっとにもー……。ごめんなコロネロ、コイツ口汚くて」

「構わねーぞコラ。口汚ねーのは性格からだからな。治しようがねー」



ハッ、と馬鹿にしたように笑ってくれたコロネロに、リボーンもフッと微笑んで見せた。
旗から見れば爽やかなイケメンの笑みだが、綱吉はあまりの空気の悪さに微妙な顔をしている。
何だろう。鳥肌が収まらない。
原因は考えるまでもなく、この二人だ。
もうこの二人で間違いないだろう。



「ま、被害は出してくれるなよー」



善良な一般市民に迷惑をかける事だけは阻止しなければ。
綱吉は面倒くさそうにいがみあう二人を無視して足を速める。
仲良くなれないのはよく分かった。
でもリボーンが本当に嫌な相手ならば無視、無視、無視。
徹底的に無視を決め込む筈なので、仲良くなけれども上手くはやっていける筈である。
喧嘩するほど何とやら。

全くなんとも自由な弟だがどこで教育を誤ったかとんだ天邪鬼に育ってしまった。
しかしそんな天邪鬼なリボーンが自分に好意を寄せている事を小指のあま皮程気付いて居ない綱吉は、煩いのも暴力も不本意ながらに慣れているからまぁいっか等と思っている。
加えてリボーンからの暴力からコロネロが守ってくれるだろうと図々しい思考までも巡らせていたりした。
ちなみにその分リボーンからの八つ当たりが増えることは頭にない。



「ったく。ダメツナはこれだからダメツナなんだ」

「何がー?」



呑気に声を上げる綱吉に、リボーンは肩を落として深く深く溜め息を吐いた。
こいつがダメの極みをだということは承知済みだ。
だから少なくとも希望が潰えた訳じゃない。
ダメダメツっ君はとっても流されやすいのだ。
それをよく知っているのは他ならぬ自分だったではないか。
そうニヤリとタチの悪い笑みを張り付けたリボーンに、コロネロは舌打ちをした。
ややこしい。
こいつがこの表情をするときは決まって何か悪巧みを働いている時だ。
そう、コロネロの予想通りリボーンは新たな答えを見い出していた。

要は、考えようなのである。
強制的に与えられた一時休戦の場。
それを次の戦までの給水地点とし、加えて策略を練り今まで以上に力をつければ問題ない。
ただ、こちらが劣勢だということには変わりが無いが。
その腹立たしい点についてはコロネロなり綱吉なりを犠牲にしてストレス発散だ。
内一匹は素直に犠牲になるようなタイプではないが構うような事ではない。
何せこちらは泣く子も黙る何様神様リボーン様であるのだから。



(ま、運命が少し変わった所で向かうところ敵無しっつー事には変わりねーけどな)



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太陽/逆位置
物事が一時中断されたり、計画に翳りが出来ます。

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