にじのゆめ、ひかりのあめ

□ちょこれいと・ちょこれいと
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当日戦







2月14日。
ついにこの日がやってきた。綱吉は玄関でギュッとスニーカーの紐を結ぶ。
その表情は宛らこれからフルマラソンに参加するマラソンランナーだ。
それほど今日と言う日は綱吉にとって、そう。
かなーり胃が重くなるような一日なのである。

昨年の説教・警告のお陰か、ポストに投入してくる輩は居なかった。
昨年はそれでエラい目を見たのだ。
誰だよポストに爆弾チョコ置いた奴。
言わずもがな、ランボである。
何処の世界に手榴弾にチョコをかけて固めた奴をくれる愚か者がいるというのか。
お陰で昨年のバレンタインは家に帰る事が出来なかった。
だって帰ったら粉砕してたから。粉砕、してたから。


綱吉はすぅ、と深く深呼吸をし、肺に空気を取り入れる。
目指す子は一人だけ。このバレンタインデーの救世主だ。



「どうか彼が元気に登園してますように!」



ドアノブに手をかける前、綱吉はパンパンと手を合わせて拝む。
そして、どうかどうか。
どうか本日が命日になるような事は一切ありませんように!と。









「ム」

「お」



てこてこと登園してきたマーモンはクラスに入って早速プレゼントまみれになっているリボーン達を発見した。
言葉通り山積みになっているプレゼントの箱の中身は言わずもがな、チョコレイトだろう。
ちなみにマーモンも自分のロッカーを開いたらどさどさどさっと溢れ落ちてきた。



「今日は遅かったじゃねーかコラ」



山の中からぴょこりと顔を出して、コロネロがマーモンに声をかけた。
普段の登園時刻よりも幾分か遅れて登園してきたマーモンだ。
そしてそんな彼はフンと鼻を鳴らしてコロネロに言葉を返した。



「君達にまとわりつく煩い奴らを避けようと思ったのさ」



朝っぱらからキーキーやかましい声に囲まれるのは好きじゃない。
マーモンに好意を寄せている人間はそう彼自身に諭されたのでそんな愚かな行動はしないのだ。
折角のバレンタインに意中の相手に嫌われるなんて最悪すぎる。



「最低な男だな。貴様は相手の気持ちとか考えないのかバイパー」



女の敵め、と殺気を軽く叩き付けてくるラルも例外に漏れずチョコレイトに囲まれていた。
ラルに憧れを抱く女子は多い。



「そーいやツナがテメーを探し回ってたぞ」

「ムムっ?ツナヨシが?」

「あぁ。どうやら何か策があるらしい」



リボーンとスカルにそう伝えられて、マーモンは普段から曲がっている口を更にヘの字に曲げる。
策。
策とは呼べないような、幼稚な考えは大体お見通しだ。
マーモン以外の奴らも察しているのだから、本人が気付かない訳ない。



「働く分だけ、お金貰わなきゃね」



その言葉と共にマーモンの口元が緩んでいく。
他の子ども達は「何だかなぁ」と思いつつも、自分のチョコには自信があるので何も言わないでおいた。


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