にじのゆめ、ひかりのあめ

□正義/正位置:マーモン
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任務遂行後。
屋敷に戻る途中の道で、仔猫を拾った。
雨に濡れて、弱った仔猫だ。
淡い栗色の毛に、甘いべっこう色の瞳。
どれもが彼を思い出させた。
拾った理由なんて、多分それだけで十分である。




「おはよう、マーモン」




きらきらと輝く朝露を眺めていると、後ろから声がかかった。
馴染みのある声だ。
自然と口元も緩んでしまう。



「ム。おはよう、ツナヨシ」



けれどご機嫌だと思われるのが嫌なので、マーモンはすぐに口をヘの字に戻してから綱吉に向き直った。



「何、それ?」



首を傾げながらマーモンの足元を指差す綱吉に、マーモンは足を退ける。
するとそこには一匹の仔猫がいた。



「わー、可愛い!どうしたの?」



仔猫を見てぱっと顔を輝かせた綱吉は、マーモンの足元にしゃがんで仔猫に手をさしのべる。
仔猫は綱吉の手をチロチロと舐めていた。
くすくすと笑っていると、ミルクの入った皿が綱吉の目に入る。



「昨日、弱ってたから拾ってきたんだ。もう回復したみたいだから、後で戻すつもりだけどね」



フン、と鼻を鳴らすマーモンに綱吉は立ち上がってふんわりと微笑んだ。
やはり意地悪なだけで、ちゃんと根は良い優しい子なのだ、彼等は。



「うん、偉い偉い!」



おじちゃん嬉しいよと涙ぐむ大袈裟な綱吉はマーモンの頭をフードの上からだが撫でている。



「ム…子供扱いしないでよね」

「子供扱いじゃないよ。ひとりの人間として誉めてるの」



そういう綱吉の言い分に、マーモンは首を傾げた。
意味が分からないと呟くマーモンの足元には仔猫が擦り寄っている。
どうやら懐かれたらしい。



「子供扱いって言うのは…うーん、多分こういう事だよ」



むむむと黙ったマーモンに、綱吉はくすりと笑う。
そして少し身を屈めて、マーモンの頬にキスを軽く落としていった。
マーモンはその一瞬に何が起こったのか分からず、パキリと固まっている。



「こういうのって、子供にしか出来ないからさー」



えへへと呑気に笑う綱吉に、仔猫もにゃんと一声鳴く。



「ムムムムっ…?」



綱吉の根拠が全くもって分からない。
そもそも、これは素直に喜ぶべきところなのだろうか。
それとも、皮肉を込めて返すところなのだろうか。

残念ながらマーモンは、唸って綱吉を前に立ちすくむ事しか出来なかった。
しかし綱吉の方もマーモンのほんのり赤に染まった頬につられて段々恥ずかしくなって黙り込み、その場には少々生ぬるい空気が流れ出していた。


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正義/正位置
自分のしたことが正当に評価され、正当な報酬を得る。

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