にじのゆめ、ひかりのあめ

□されど小学生
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音楽の授業はテストが無ければ平和で心地の良い授業だ。
いや、本当。
テストさえ無ければ。



「……できない、」



そろそろテストの日に近付いてきた。
今回は、いや、毎回なのだが、ヤバイ。
リコーダーを甘く見ないでほしい。
教科書の音符すら読めない綱吉には、一種の拷問だった。
後ろでは、今日も元気なイジメっ子共が楽器を玩具にして遊んでいる。

リボーンはピアノでジャズを引き、コロネロはジャカジャカとそれに合わせてギターを弾いていた。
もう、何でもありなんだ世の中。

因みに教師は他の生徒同様2人に釘付けで拍手なんぞしていた。
こっちはリコーダーも吹けないというのに。
分からない生徒に教えるのが教師ってもんじゃないのか。
畜生これだから教師は信用ならない。



「何してるんだ?」



いきなり声をかけられて、綱吉はびくりと肩を揺らす。
見ればスカルが立っていた。



「リコーダーの…テストの、練習」

「ああ。エーデルワイスか」

「…うん」



小さくコクりと頷いた綱吉の隣に、スカルは腰かけた。
煩くてやかましいリボーンたちは今楽器に夢中だ。



「スカルは、吹ける?」

「当たり前だろう」

「だよねー…ははは」



あの華やかな輪の中に入っていなかったのでもしかして、と思ったがどうやらそれは期待外れだったらしい。
綱吉は乾いた笑みを漏らした。



「もしかして、吹けないのか?」

「い、いや…そのー…」

「じゃあ吹いてみろ」



聞いててやるよ。

そう言ったスカルに、綱吉は瞳を輝かせた。
もしかしたら、教えて貰えるかもしれない。
ホラ、と促されて綱吉はリコーダーを口に加えた。
そして遠慮がちに吹き始める。
曲目はもちろんエーデルワイスだ。


たどたどしく指がリコーダーの上を滑る。
リボーン達の音に消されそうな程の大きさで紡がれるソレは、なんというか―――……うん。



ふぃー、と吹き終わった綱吉が、スカルを伺うように見る。
パチ、と音が合う程に目があって少しドギマギしてしまった。

俺の演奏どうだった?
そう綱吉が口を開く前。
スカルが先に言葉を紡いだ。



「すごいな」



まさかのお誉めの言葉に、綱吉は目を輝かせてスカルを見た。
――――…が。








「蛇でも呼んでいるのか?」





台無しである。
しかもちょっとスカルが微笑んでくれたもんだから更に切なさ満点だった。
そんなにか。
そんなに人のエーデルワイスは破滅的だったか。



「〜〜っ!!!」



綱吉は遂に耐えられ切れなくなって音楽室を飛び出していった。
最早スカルにかけたい言葉は皆無だ。
だって忘れてた。



スカルってリボーン達の中に居るからその要素が薄く見られがちだけど。
嗚呼、そうだったよな。
アイツも性格悪かったもんな。



「イジメっ子なんて滅べばいいのにぃ!」



と。
イジメられっ子の綱吉は叫ぶのだけれど。



「…俺何かしたか?」



結局の所スカルもコロネロもリボーンもイジメているという事に関しては無自覚無意識なので、誰も救われる事はない。


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