にじのゆめ、ひかりのあめ
□されど小学生
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体育の授業は綱吉にとって大嫌いな授業の内の1つ。というかトップオブ。
しかも今日の体育はドッチボール。
得意な人は得意だが、苦手な人は大の苦手。そしてトラウマを所持している。
綱吉も、例外にもれずその内の1人だった。
風が吹いて砂が舞い上がる校庭という名の戦場。
恐い。
果てしなく恐い。
そもそも他のクラスのドッチボールを見る限り、一般の小学生のドッチボールというのは「きゃー!」とか「あたっちゃった〜!」とか和気あいあい、楽しい現場の筈である。
が、しかし。
「あたった奴は殺す」
「テメーら気合い入れていけよコラ」
この2人がいる限り、そんな光景は拝めないだろう。
このクラスのリーダー的存在。リボーンとコロネロ。
見事なイジメっ子である2人に、クラスの一般男子が敵う訳もなく見事に下僕と化していた。
因みに女子は体育館でバレーボールだ。羨ましい。
「おい、ダメツナ。わかってんだろーな?」
「ひぃ…!!」
綱吉はリボーンのチームだった。あたったら殺されるチームだ。
まだコロネロのチームの方が良かった。
あたっても殺されないし、コロネロの殺気を直に浴びなくても良い。
「じゃあ、はじめー!」
そして呑気な女教師の声が響いて、ドッチボールという名の戦争は開始された。
10分後。
「ダメツナ!逃げてばかりいねーで取れ!」
「む、むりっ…!」
「けっ、情けねーヤローだぜコラ」
「ちょこまかとうざいな。さっさと当たればいいものを…」
クラス一のイジメられっ子は最後の一人となっており、コロネロとスカルから投げられるボールから泣きながら逃げていた。
リボーン達は苛々しながらも、若干感心している。
イジメられっ子の特技は逃げる事だ。
「うぅっ…もうヤダっ!」
最終的にリボーンも加わって何故か3対1の只のイジメとなっていた。
ふらふらになりながらも、綱吉はボールを避けていく。
というか丁度いいタイミングで転んだり背を反ったりするので、一向に当たらないのだ。
「チャイムまであと何分ある」
「3分ですね」
「おとなしく当たってろコラ!」
ビュン、と綱吉の顔の横をコロネロの豪速球が飛んでいく。
ピっと頬が切れた音が聞こえた。
「顔面セーフか」
最悪だ。試合は続行である。
「せ、せんせっ…!」
綱吉は女教師に助けを求めるが、女教師はコロネロ達のすばらしい基礎体力にお熱を上げていた。
畜生これだから教師は信用ならない。
「あと何分だコラ!」
「2分です」
あああ…時間の流れがとてつもなく遅い。
早く、早くチャイムっ!
「あと1分30秒…1分…50秒…」
スカルのカウントダウンが始まる。
綱吉は上がりきった息をそのままに、何度目か分からない転倒をした。
涙が落ちて、乾いた砂を濡らす。
至るところ血だらけだ。
砂利も傷口に入っているだろう。
それにもう、痛いし疲れた。
「お、」
動きを止めた綱吉に、3人も動きを止めた。
瞬間、綱吉はガバリと体を持ち上げ――――…
「うっ、わぁああああああああん!!」
そして泣いた。
3人は見事に固まっている。顔には「やべぇ」と書いてある。
そこで無情にもチャイムは鳴り響いたのだ。
こうして今日もまた、ドッチボールという名の戦は一人の少年の心に傷とトラウマを残していった。
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