にじのゆめ、ひかりのあめ

□巻いて、巻かれて
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ぐるり、ぐるぐる。
巻いて、巻かれて二人はひとつ。




「ツナ、起きろ」

「嫌だあと5分」



朝。
篭れ日が風と戯れてフワリと踊るカーテンから溢れて部屋の中を明るくてらしている。
昨晩の闇が嘘のように消えていた。

しかしそんな事は関係ないとでもいうように、昔からずっと変わらない。
おはようの前の2人の会話は、毎年毎日毎朝毎回。
飽きることなく繰り返される。
只、起こし方というものは少しだけ変化を見せているけれど。



「んー……リボーンも、」


本日はいつにも増して寝汚い綱吉が、隣に寝ていたリボーンを腕の中に巻き込んだ。
リボーンが抵抗を見せなくなったのは、つい最近の話である。
ボスに就任して、漸く1人の人間として認められるようになったのだろうか。

2人して、白いタオルケットを共有しあう。
ぎゅう、と力を込めた腕の中、リボーンが小さく溜め息を吐いたのが聞こえた。
聞こえたけれど。聞こえないフリだ。



暖かい子供を抱き締めながら、今朝の献立をグダグダと考える。
誰かが泊まった次の朝は、必ず綱吉が朝食を作らなければならない。
それでも綱吉は苦に思わないのだ。
むしろ子供たちのためになるのなら、と率先してやっているくらいだ。
それに市場にでずとも、足りない材料は調理室からくすねてくれば良い。

さて、今日は冷蔵庫の中に何が入っていただろうか。

ああ、そうだ。

確か、先日。中庭で取れたのよ、とオレガノが持ってきてくれたアスパラガスがある。
アスパラガスか。
アスパラガスといったら母が、綱吉が美味しく食べられるようにと毎回振る舞ってくれていた物がある。
そしてふいに、何だか今の状態と綱吉が思い起こした料理に通じるものがあり、つい笑みが漏れてしまった。
リボーンが眉間に皺を寄せた事が分かる。
綱吉の間抜けな思考を読み取ったのだ。



「誰がアスパラガスだ、誰が」


ムッとした怒りを含んだ子供の声色に、綱吉は閉じていた瞳をパチクリと開いて声を出してクスクスと笑い出した。
篭れ日が眩しい。



「ははっ、ごめんリボーン」

「ったく、テメーは余計な事を考える力があるんだったらとっとと起きろよ」

「分かったよ。今起きるってば」



本気で子供の機嫌を損ねる前に、重い体を気合いで起こせば、リボーンはフン、と鼻を鳴らして綱吉に抱きついてきた。
おっと、と言いながらも受け止められるのは、慣れだ。
今度はぎゅう、と子供の腕の中におさめられる。
それでも状態は変わらない。
むしろシーツを覆い被ったリボーンに抱き締められ、腕を回されて更にソレらしくなった。



「ツナ、今日の朝飯はなんだ?」



リボーンは不機嫌さを取り払い、ニッと笑って綱吉の顔を見つめている。
答えを促している辺り、リボーンもソレは嫌いじゃないのだろう。

すぅ、と篭れ日の光に浸蝕された空気を吸って、綱吉はリボーンに微笑む。
そして一言。



「今日の朝飯はアスパラガスのベーコン巻きに決定しました〜!」



クスクスと楽しそうに笑う生徒を見て、リボーンは割りかし楽しそうにやれやれと首を横に振った。
とりあえず漸く起きた綱吉の頬左右に一回ずつと、額に一回キスを落とす。


ちゅ、と。随分可愛らしい音が響いた。

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