Episode

□過去ノ話
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気が付いた時には、いつも一緒だった。

家も近所、両親も仲が良い、通っていた学校も同じという、全てに於いて同化された環境。
そこで、俺達は共に育った。

常に俺達は一緒に居た。
学校の登下校も、休み時間も、家に帰った後も。
彼女が遊び相手で、親友で、兄弟だった。
子供の頃の俺達は、互いが自分達の世界の中枢にあった。

そして彼女は俺の想い人だった。

2つ年下の、小さな女の子。
いつも隣に居てくれる、愛しい、人。
彼女の笑顔が、その明るさが大好きだった。
どんどん成長していっても、その変わらない彼女の様が。

15歳になる俺の中で、ずっと支えになってくれている。


「カーフ!」


学校帰りのある日の事。
彼女との何気ない会話から俺達は始まった。


「カーフってさー、」
「うん」
「やっぱりルイゼッラに所属しちゃう訳?」
「え!」


事もなげに腕を絡ませながら問い掛けてくる彼女。
腕から伝わるマリーシュカの体温を意識してしまう俺は、恐らくもう末期なんだろう。


「パパンもママンもカーフの家も、ルイゼッラの幹部じゃない? カーフはどうなの?」
「うん…俺はまだ分からないな」
「私はまだ、将来の事なんて考え切れないからさ。カーフはどうなのかなって」
「マリー……


───一緒にルイゼッラに入ろうか」


「へ…?」
「俺もまだ決まってないけど、進む宛がないならまた2人一緒に居ようか」
「…………うん。そだね」
「そうだよ」


俺達にとってそれは当たり前なんだから。
だからそれ以上を望んでる俺はきっと欲が深いんだろうけれど。
今更この気持ちに、嘘なんか付きたくもない。


「まだカーフと一緒に居られるんだね」
「そうだね」
「私達、ずっと一緒だよね」


彼女と話しながら帰る道のりは、永遠の様にも思えた。
もし、そうであったならば、ずっとマリーシュカの隣に居る事を切に願ったのに。
呼び止める俺の手には、その焦燥が色濃く出ていた。


「マリー、俺───…」


6年前のあの日。
今では良い思い出として、語られる話だ。
だが、あの時、俺達はずっと一緒である事を、改めて再確認した。





→あとがき
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