しょうせつ
□岩男SSS
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[秋風/泡]
水面を揺らす風はヒラヒラと。
鮮やかに彩られた赤と黄色を運んできた。
泡(あぶく)はその揺らぎ踊る 一枚の葉を手にとった。
きれいな きれいな 茜色。
まるで兄弟達だ。
純粋な、ただ真っ直ぐな感情をもった彼らみたいだ。
泡はその鮮やかな色彩に思わず感嘆の溜め息をつく。
水面を揺らす風達に、暇つぶしのように散らされた
単なる落ち葉だというのに。
しゃらしゃら と 葉っぱ達が
泡をつついていく。
くすぐったいような、まどろっこしいこの気持ちは、嫌ではなかった。
そうだ。今度は、
博士も連れて皆で来よう。
きっと 風を操る兄は、機械に詰まると言って嫌がるかもしれないが。
泡は そんな幸せな未来を
眼の内に浮かべて
鮮やかな色彩に 微笑んだ。
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