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□実験
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朝食をトーリスが作り、
それをダイニングテーブルからフェリクスが眺める。

イヴァンから解放されてから、これが日常になっていた。


時々フェリクスが寝坊したり、フェリクスが本当にたまに手伝ったりしたが、
大体はそんな朝だった。



トーリスが今日も朝食を作ろうとした時、
フェリクスがふと、何か思い出したように、言った。
「俺、今日、手伝う…」

まだ寝ぼけて単語だけだったが、トーリスはそれを聞いて全て理解し、やれやれ、といった具合に、だが笑顔で息を吐く。
フェリクスの分もスペースをあける。


もう相方として染み付いたことだ。
どうすれば笑い、どうすれば拗ねるか。
そんなことは手に取るようにわかっている、はず。


だから今、フェリクスが言った言葉にどう対応すればいいか、必死に思いあぐねていた。

「え、…と…フェリクス?」


「俺、好きなんよ、トーリス」




こればかりは、さすがのトーリスも対応に困っていた。

フェリクスは尚も笑顔だ。
笑顔で、朝食を作っている。
人並みよりは遥かに上手いその手付きを眺めながら、言葉の真意を探る。




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