土沖novelU

□ごはんですよ
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また雨か‥薄暗い空を
見上げため息を1つ。

「何ため息吐いてるんでぃ!幸せが逃げやさぁ」

呆れ顔の総悟。

雨は苦手なんだよと振り向いた。


「機嫌直しなせぇ」
とキスして

「買い物行ってきやす」

鼻歌混じりで出かけた。

静かな部屋。雨音が心地良い。


「雨って言えば」


瞼の奥に懐かしい光景が蘇った。


だんだん意識が遠のいて行く。


「湿気て美味くねぇ」

庭に煙草を投げ捨てた。

雨で稽古が出来なくて
イライラする。


早く止まねぇかなと素振りを始めた。

道場に竹刀の音だけが鳴り響く。


「総悟、頂きます」

小さな茶碗を抱える近藤さんの姿。

茶碗よりも手のでかさが目立っている。


横にちょこんと座る蜂蜜色。

おいしいでしゅかぃと?可愛い笑い声。


どこか奇妙なコントラストに笑いがこみ上げる。

まだ食事の時間じゃないし‥何やってるんだかと素振りの手を止めた。


縁側に寝転がった。


集中力に欠けてんなぁ。

梅雨空を恨めしく見つめる。


寝転んでいるうちに激しい睡魔に襲われた。
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