土沖novelU

□ブルートパーズの夜
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あったあった!

埃っぽい箱の中の青い
指輪。


大事そうに指にはめた。
「総悟?何度も呼ばせんな」


返事の無い俺に痺れを
切らした土方さん。

これ覚えてやすかぃ?と
キラキラ光る指輪を翳した。

そんな昔ん事忘れちまったと話を逸らす。


この指輪にはたくさんの思い出があるんでさ。

だから捨てられない。


忘れたと言いながらも
土方さんの顔は真っ赤。

近藤さんさえも知らない俺たちだけの秘密。


話は10年以上前に遡る。

「ちょっと出掛けて来る」
チビガキの手をそっと
離し布団から這い出た。

気をつけてな!の声を
合図に道場を後にする。

「またおいてきぼり」

横にあるへこみが土方
さんのいた証。


布団をぎゅッと握りしめると煙草の香り。


「ひじかたしゃん?どこいったんでしゃぁ?」

枕を持ち道場を探し回る。


「総悟!どうした?」


俺の泣き声を聞いた近藤さんが慌てて駆け寄って来た。


涙でベタベタの俺を膝に乗せ「トシはすぐ帰って来るから良い子で待ってような」

頭をわしゃわしゃと撫でられた。


近藤さんに貰った星の形をしたお菓子を握りしめ土方さんの帰りを待った。
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