土沖novel

□ほんの少し手を伸ばせば
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「土方さん髪伸びやしたねぃ。切ってあげやしょうか?」

「あ?お前髪より首狙っただろうが!」

慌てて振り向けば

「副長の座は俺のもんでぃ」

ケラケラ笑うアイツを見て思い出した。

まだ真選組結成前の事だ。

何時もの様に練習を終え
芋道場に戻ると

「やだ!まだねたくないでしゃぁ」

愚図る総悟に困り果てた
近藤さんが「トシいい所に。総悟はお前が居ないと眠れんらしい」

生意気なガキを手渡す。
「は?何で俺に」

「まっ頼むわ」そそくさと逃げやがった。

どうしたものかと思っていると

「かみさわらせて」

俺の髪を握り締めると

小さな寝息が聞こえる。
「何時もは生意気なガキだが可愛いもんだな」と
腕の中の子供を見つめてたっけ。

「土方さん!何ボンヤリしてるんでぃ?」

「俺の髪に触らないと
眠れねぇんだろ」
と聞けば

「そんなガキじゃありやせん」答えた頬が紅く
染まっていた。

「今はほんの少し手を伸ばせばアンタがいるから大丈夫」

優しく微笑む顔が可愛く
思えた春の1日
 

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