08/14の日記

11:36
あこがれ
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小学校の頃は、2段ベッドでねていた。

わたしは上。
下はおとうと。

おとうとのベッドには
よくカイジュウがきていた。

たたかう飛行機も。

正義のヒーローも。

ときには電車も通っていた。

それは彼だけのためのカイジュウで
   彼だけのためのヒーローで
   彼のあこがれ。

毎夜のように それらはやってきて
おとうとの頭の中を
ベッドの上を
部屋中を はしりまわっていた。

私にも それらが来たことがわかるのは
おとうとが効果音を発するから。
彼は効果音しか発しない。
効果音のでないやつが来ていても
私には わからない。

それが、私たちの部屋の夜をうめつくしていた、
彼のあこがれ。

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11:27
おにぎり
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きょうは失敗した。
こないだも失敗した。
言いたいことも言えないし。

だから
おにぎりをつくった。
大きいおにぎりを1つ。

それを持って 夜の公園を歩いた。
1周歩いてから、家に帰って、おにぎりを食べた。

何も入ってない。塩おにぎり。
味付のりが まいてある。

たぶん これで、大丈夫。

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11:20
あげパン
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今日もみつおはパンを3つ買っていく。
いつも夕方からのバイトの前にニュー大阪に寄っているのだが、今日はバイトは入っていない。
たまにはバイトのない日にパンを買ってみようと思って、いつもは夕方の常連客であるみつおが、開店間もない10時台のニュー大阪にやってきたのである。

新商品がなかったので、あげパン2つとあんパンを1つ買い、「ども。」と言って店を出た。
店から少しぶらぶらと歩き、町の西はずれにある公園へやってきた。

この町には3つ公園がある。
町の真ん中辺りに1つと、小学校の横に1つ。それと、みつおお気に入りのこの西の公園だ。

みつおはベンチに腰かけ、パンの入った紙袋をひらいた。ニュー大阪のあんパンは、みつおの評価によれば、まずまずの味である。まずはそのあんパンを食べた。やはりまずまずである。
次にいつものあげパンを食べる。

サクッとした。
いつもみつおが食べるあげパンは、もう油がしみていて、こんなにサクッとしていない。
「おれ…いつものクタッとしたのが、すきだなぁ。」

そうつぶやいてみつおは、さくさくの揚げパンをもとの袋にしまって、ベンチに寝転んだ。
さあ、明日はまた、いつもの時間からバイトだ。

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10:59

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松ばあが、とみ子に朝ごはんをやっているところへ、電話がなった。とってみるとそれは、とみ子を送ってきた養豚場からだった。

「あ、もしもし。この間、豚肉の発注をうけた前川養 豚場のもんです。あの、おたくに豚が丸々一匹届き ませんでしたか…?」

「ああ、届いたよ。」

「本当に!?そいつは失礼しました!
 実はその豚、うちのせがれが勝手に送ったもんでし て…。いやぁまさか本当に送っちまってるとは…! その豚、せがれが初めて世話した豚の産んだ子なん です。愛情かけて育てた豚の産んだ子を、食用にす る気になれなかったみたいで…。それでそちらに送 る予定の箱に、その子豚を入れちまったようでし  て…。
 −−−とんだ失礼をしました!せがれにも頭を下げ させるんで!」

電話の相手が父親から息子へかわった。

「ーーーーーあの……申し訳ありませんでした…。
 どうしても……どうしても 殺すなんて…できなか ったんです…ーーーすみませんーーー………。」

長い間があった後、受話器の向こうから、またせがれの声が聞こえてきた。

「あの………あいつ、どうしてますか……?」

松ばあは答えた。

「私はね、うちの店で豚パン祭りをするために豚肉を たのんだんだ。それはそれは大盛況だったよ、豚パ ン祭りは!あんたが丸々一匹送っといてくれて助か ったよ!」

「それじゃあ…それじゃあ…
 あいつも………パンの……具…に………?」

「ああ、そうだよ。具にしちまったよ!」

息をのむ音がむこう側からした。
つづいて遠くから、女の声が聞こえてくる。
「どうしたの?おまえ顔が真っ青だよ!??」

ドタン と何かが倒れる音がし、少ししてからおやじが電話のむこうに立った。
「あの…一体何をせがれに…?」

松ばあは、やれやれといったため息をつき、言った。
「あの子豚はパンの具にしたと言ったんだよ。
 おたくのせがれが目を覚ましたら言っといてれ。  もう親に隠れてこんなことするんじゃないってな。 
 それから、子豚のこと、うちでは『とみ子』って呼 んでる。あんたの好きなときに会いにきなよって。 たのんだよ。」

「あっ…」

養豚場のおやじは、まだ何か言うことがあったようだが、松ばあはその電話を切った。
横にとみ子がやって来て、「ブーーー」と鳴く。
朝食を食べ終わって、ご満悦のようだ。
「さてとみ子、私もメシを食べようか。」

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