07/24の日記

18:15
かんばん娘
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今回松ばあは、全国各地から豚を取り寄せてみた。店で1週間と3日、豚パンまつりをすることにしたのだ。


先月の終わり頃、きぬゑのところで駄菓子を買っていくボウズ達に、新しい仲間が加わった。
よしおと言うその少年は、みごとに丸々と太っており、子ブタのようである。太ってはいるが、汚らしいさというものを全く感じさせないこの子ブタくん、愛嬌もあり、きぬゑもよくオマケをつけてやっているらしい。
店の小窓から、この小ブタくんを見ていた松ばあは、抱きつきたくなる衝動をかきたたせる、この小ブタくんのようなパンで店をうめつくせば、大繁盛間違いなしとにらんだ。

昨日までに、27発注したもののうち、19種類の豚肉が松ばあのところに届いている。試作品もつくってみた。どれもなかなかのデキである。
今日の午前中に残りの7種類も届いたので、店を閉めたあと試作品をつくってみるつもりだ。
最後の1種類も明日届くであろう。
その低い、店を閉めた後、予定通り試作品をつくり、そのできに満足して、明日届くだろう残り1種類の豚肉を楽しみにおもいながら、眠りについた。



夜が空けた。
顔を洗い、パンを焼き、支度をして、松ばあは店を開けた。
少しして宅配便の若いお兄さんが荷物と一緒にやってきた。
「ちわーす、宅配便でーす!」ハンを推し、荷物を預かる。ことにした。
昨夜まで、いや、今しがたまで心待ちにしていた荷物だが、今来たこの荷物を本当は受け取りたくなかった。

どういう訳か、松代の店にブタがやってきたのだ。

「ブーフガフガ ブーフブー…」松ばあが発注を間違えたのか、送り先が間違えたのか。本物のブタが来たのである。
「おい、おまえ……。
来るとこ間違ったんじゃないのかい…。」
「ブーフブブー ブフー」
ブタは松ばあの足元をまわりながら、鳴いてこたえる。
何であろう。このブタ。
松ばあは、このブタが遠路はるばるやって来て、自分のまわりをブフブフいいながらまわっているのを見ているうちに、送り返す気力がなくなってしまった。

元気の良いメスブタ。
命名とみこ。
今日からこの店のかんばん娘である。


豚パンまつりは、しばらくお預けであろう。

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