雪比良隊員の妄想記
□敵愾心
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破面達が現世に出現し、オレや日番谷隊長、乱菊さんが限定解除を受けやっとのことでそいつらを倒した後、オレは別の場所で戦う恋人のことが気になり、その霊圧を探ると現場へと駆けつけた。
そこには、アスファルトが剥がれ、土がむき出しになった、クレーター状に深く凹んだ地面があり、戦いの激しさを物語っていた。
オレが近づいて行くと、それまで姿が見えなかった愛しい人…一護がその中心で身を起こすのが見えた。
身体のラインが綺麗に出る、コートのような漆黒の死覇装に身を包み、右手に漆黒の斬魄刀を握っている。
卍解姿の一護だ。
その姿は、いつ見ても美しく、研ぎ澄まされた刃のような清廉潔白な雰囲気を放っている。
所々、傷付いて血を流しているのだが、そこまで大きな怪我はなさそうだ。
血を流してもなおその美しさは増すようで、不謹慎にも心打たれるものがあり、オレは思わず見とれてしまった。
たが、何となく今日はその様子が少しおかしく、纏う空気の色が一瞬いつもと違って見えた。
それを裏付けるように、一護はオレが近づいても、こちらを見ようともしない。
緊張感を漂わせ、周囲を警戒している…というよりも、肩を落としひどく落ち込んでいるようにその姿は見えた。
オレは、周囲の霊圧を探り、破面達がいないことを確認すると、ただひたすらそのままの格好で動かない一護に遠慮がちに声をかけた。
「…破面共は虚圏に返ったのか?」
「……」
どうなんだ?と思いながら問うのだが、それに対する一護の応えはなく、こちらを振り返りもしない。
やはり様子がおかしい……。
先ほどまでの喧騒が嘘だったかのように、静まり返る街を、己の呼吸音すら大きく聴こえるような静寂が支配し始める。
「……勝ったのか……?」
続けて問うたその言葉に、やっと一護はピクリと反応すると、俯いていた顔をゆっくりあげるが、やはりこちらを見ないまま、告げる。
「…負けた……」
その、口調はただ単純に事実を告げるだけの感情の籠らぬようなものだったが、恋人であるオレには、一護のその言葉の裏に潜む、狂おしいまでの悔しさが感じとれた。