雪比良隊員の観察記

□信頼と愛情と
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 完全に目の醒めた俺は、そのまま布団の上で体育座りをして膝を抱え込み仕事をしている修兵の背中を見つめた。



「……どうした?一護、寝てていいぞ」



 話しかけるでもなく、何をするでもなく、黙ったままだった俺の視線が気になったのか修兵が言う。


「…ん、あのさ…」

「なんだ?」


 俺は、以前からずっと聞いてみたかった事を、聞いてみようと決心した。



「大変、そうだよ…な?『隊長権限代行』って……」

「……まぁな」


 少しの間、手を止めていた修兵が再び手を動かし始めたようだ。


「……俺はさ、この隊の隊長だった東仙って奴の事、全く知らねぇ…」

「………ああ」


 ピクンと修兵が小さな反応をした。
 だが俺は気付かないフリで先を続ける。


「ソイツがどういうつもりで、尸魂界を裏切ったのかなんて、想像もつかない……」

「………」

「だけど……」


 何事もない感じで、手を動かしている修兵だったが、何となく緊張しているような雰囲気が漂っていた。


「……良いところしか聞かねぇんだ……」

「……………」


 修兵と恋人になり、九番隊の隊舎に頻繁に出入りするようになった頃から、仲良くなった奴等に色々と聞いていた。
 『東仙』という元隊長が隊員達に慕われ、尊敬されていた人格者だったということ、副隊長の修兵が信頼を寄せていたこと……


 実際に、裏切りを受けた筈の九番隊の奴等ほとんどが、怒るでもなく、嘆くでもなく、ましてや恨み言を言うのでもなく、皆がみんな不思議そうにするばかりだった。



『なんで、東仙隊長が尸魂界を裏切ったのか…検討もつかない』と口を合わせて言うのだ。



 結局、真面目で責任感と正義感に溢れた立派な隊長。
 ……そんな印象しか受けなかった。





 まぁ、それでもある意味俺はそれが悔しくて仕方なかったし、今でも腹立たしく感じる。恨み言の一つや二つあってもおかしくない筈なのに。





 そして修兵はその事を一体どう思っているのだろう…?聞きたくても、今まで機会がなくてなかなか聞けなかった。




 
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