雪比良隊員の観察記
□ある日曜日の出来事A
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「…………」
「………なんだ?」
俺はもちろんポーカーフェイスを貫いた。
井上は必要以上に近づけていた顔を離すと、松本に向き直る。
「ん〜、あたしには何時もと同じように見えますけど…?乱菊さん」
「えぇ〜!織姫!!良く見てよぉ、今日は隊長の眉間のシワが一本少ないのよっ!!」
「………」
納得いかない!とばかりに答えたセリフがそれか………松本。
そんなの解るわけねぇだろ……
「…っ!!ああ〜ホントだ!」
「…っ!!!???」
「でしょでしょ?織姫」
目を剥いて驚く俺を尻目に、井上に解って貰えたことが嬉しかったのか、松本はその手をとって喜んでいる。
お前ら、普段俺の何をみてるんだ…コノヤロウ。
「ホントだぁ〜!うわぁ、冬獅郎くん何かあったの?」
珍しい!と騒ぐ二人に、口々に問いかけられた俺は、いい加減こめかみや口端がピクピクし出す。
この二人……特に松本は、完全に俺の反応を楽しんでやがるに違いない。
「おめぇら、うるせぇぞ!!いい加減にしやがれ!」
「だぁって、隊長がナイショにするからイケないんですよぉ」
「そうだよ、冬獅郎くん。良いことなら教えてよぉ〜」
ねぇ?と二人、松本と井上は顔を見合わせこの話題から離れる気はないらしい。だが、松本は急に何かを思いついたかのようにハッとなり、真剣な顔をして問いかけてきた。
「もしかして隊長……」
「…なんだ?」
ズズイっと顔まで近づけてきて、重大な事を告げるように言った。
「逢い引きですかぁ?(笑)」
「……はっ?」
「え〜〜!冬獅郎くん恋人いるのぉ?」
何を言うのかと思いきや、当たらずも遠からず、ズバリ核心的な松本の発言にギクリとした俺だったが、それよりもその後の井上のセリフの方がとても引っ掛かってしまった。